電源

TEの保護部品について

TE connectivityのカタログを見ていたらずいぶんといろんな保護素子が載っていたので、メモがてら簡単に紹介したいと思います。

 

ポリスイッチ

いわゆるPTCサーミスタです。

温度が上がると抵抗値が急上昇する部品で、その特性を使って電流を制限をする用途で使います。

「大電流が流れる→部品の温度上昇→部品の抵抗値が上昇→電流が制限」

という流れで電流を制限します。

普通のヒューズと違って、電流が止まれば冷えてまた導通状態に戻るので、過電流の度にヒューズを交換しなくて済みます。

そんな特性上、最近の機器ではヒューズ代わりにポリスイッチを使うことがすごく多いです。

 

こんな便利で素晴らしい部品ですが、周囲の温度で特性がずいぶんと変化してしまいます。

温度が上昇すると抵抗値が上がる仕組みなので、高温環境では少しの電流が流れただけですぐに抵抗値が上がってしまいますので、あまり電流を流せません。

低温環境では逆に大電流が流れてもなかなか温度が上がらないので、保護がききにくくなります。

なので、「常温ではきちんと保護されるのに、低温環境だと機器が壊れる」ということが現実にあります。

 

それから、自分の発熱で抵抗値が上がる仕組みなので、反応速度はそこまで速くありません。

電流と周囲温度によりますが、データシート上の代表値だと0.1秒から数十秒かかります。

数msの大電流で壊れてしまうような回路の場合、ポリスイッチでは保護しきれません。

 

 

ポリマーESD保護素子

ツェナーダイオードやバリスタのような高電圧を吸収する保護素子。

容量が0.25pFと小さいので、高速信号でも使えます。

ちなみに普段使っているROHMのツェナーダイオードだと寄生容量が10pF以上あるので、あまり高速な信号だとゆがみます。

 

ただ、ラインナップが3つしか無いので、ぶっちゃけ使い所に困りますね。

最大動作電圧 14V/24Vのラインナップのみ。

 

シリコンESD保護素子

これも高電圧を吸収する保護素子です。

しかし、上と違って容量が4.5pFあるので、高速信号には使いにくいです。

また、最大動作電圧6Vのラインナップしか無いので、使い所が限られます。

USBの保護ぐらいでしょうか。

 

ガスアレスター

これも高電圧を吸収する保護素子ですが、75V-4000Vと高電圧向けです。

通常の機器では内部でそれほど高電圧を使わないので、AC部分向けのソリューションですね。

 

表面実装ヒューズ

ヒューズと言うと丸いガラス管を思いつきますが、今ではチップ型のSMDタイプのヒューズもあります。

正直、「短絡で発火しないように保護はしてほしいけど、それで機器自体が壊れてしまっては困る」というケースがほとんどなので、一度切れたらおしまいなヒューズを使うことはめったにありません。

だいたいポリスイッチを使いますね。

軽負荷時に効率がいいDCDCコンバータの選び方

電池駆動の製品でDCDCコンバータを使うとなると、効率が非常に大事になってきます。

それだけでも結構難しい問題ですが、「スタンバイ時間が長い」となるとさらに難しくなります。

 

電池駆動製品の場合、スタンバイのときは数十uA程度の電力で待機することになると思います。

スタンバイ時に1mAも消費していたら、スタンバイだけですぐに電池が終わってしまいます。

 

しかし、「大電力の時に効率がいい」設計をすれば低負荷のときにも効率がいいとは限りません。

軽負荷時に消費電力を下げるにはいくつかの工夫が必要です。

 

・消費電流が小さいDCDCコントローラを選ぶ

当たり前ですが、大事です。

DCDCコンバータのコントローラICでは数mA以上の消費電流が流れるものも多く、そんなものを選んでしまったらどうにもなりません。

 

・場合によってはFET外付けを選択する

最近のDCDCコントローラICはほとんどFET内蔵です。

しかし、FET外付けタイプではさらに消費電流が低いタイプがあったりします。

そういうときは、めんどうではありますが、FET外付けタイプを選択するのも手です。

 

・発振周波数が低いものを選ぶ

FETのON/OFFが切り替わる瞬間、つまりFETが半分ONになっているような瞬間があります。

そのときにはFETの抵抗が高い状態であり、電力がFETで消費されてしまいます。

また、FETのゲートを駆動するためにも電力が消費されます。

このような理由から、FETのON/OFFが変化する回数は低いほうが効率が良くなります。

つまり、発振周波数が低いほうが効率がよくなります。

その代わりに、大きいコイル・コンデンサが必要になってしまいますので、トレードオフで判断しましょう。

 

以上、小田切でした。

LDOの最大出力電流は信じてはいけない

LDOのデータシートを見ると「最大出力電流:1A」などと書いてあると思います。

ですが、これは信じていはいけません。

 

なぜでしょうか。

 

最大出力電流1Aというのは、

・電流制限機能が1A以上になっている(1Aまでは電流制限が効かない)

・電流を制御している素子が1A以上耐える

といっているだけです。

 

「え、1Aに耐える素子が入っていて、電流制限も聞かないんでしょ? じゃあOKじゃん」

 

と思うかもしれませんが、これが間違い。

一つ忘れている項目があります。

それは

 

 

です。

 

「1A流したときの熱に耐えられるか?」はこの項目に入っていないのです。

この判断には「許容損失」という項目を見る必要があります。

 

例えば、このLDOの許容損失が基板実装時に2Wだとします。

 

5Vから3.3V 1Aを作る場合では、

LDOの損失=(5-3.3)x1=1.7W

ですから、許容損失以下でOKです。

 

12Vから3.3V 1Aを作る場合では、

LDOの損失=(12-3.3)x1=8.7W

ですから、許容損失を大きく超えてしまいNGです。

 

このように、入力電圧によってLDOの損失=熱が変わってしまい、許容損失以内かそうでないかがかわってしまうのです。

 

ということで、データシートの電流表記を見るだけでなく、許容損失で実際にどれだけの電流が流せるか確認するようにしましょう。

 

以上、小田切でした。

LDOのリップル除去率とは

LDOの特性を見ていくと「リップル除去率」というものがあります。

 

LDOで例えば5Vから3.3Vをつくるとします。

しかし、5Vが揺れていて±0.1Vの間をフラフラしています。

すると、出て来る3.3Vも±0.1V変動するのでしょうか。

いえ、それが違います。

それがリップル除去率です。

 

例えばリップル除去率が60dBのばあい、20dBで10倍ですから、1000倍になります。

ということは、入力が±0.1V揺れていても、出力は±0.1mVということになります。

LDO自体が出すノイズやその先の回路の消費電流変動による電圧変化のほうが大きいでしょうから、

実質的には入力元が±0.1V揺れていた影響はまったくないということになります。

 

これを聞くと非常に素晴らしく感じると思います。

 

「どんな汚い電源でもLDOを挟めばすごくきれいになるんだ。素晴らしい」

 

しかし、実はそうではありません。

まず、LDOというのはそんなに速い動きをするデバイスではありません。

あんまり俊敏に動くと電圧変動に過敏反応して発振してしまいます。

なので、位相保証などの機能であえて動きを抑えてあります。

 

ということは、遅い動きには対応できても、速い動きには対応できません。

LDOのリップル除去率のグラフを見てみると、たいていどんなLDOでも周波数が上がるとリップル除去率は落ちていきます。

よくても数百kHz程度が実用域です。

(10kHzぐらいで効かなくなるものもあります)

数MHz以上のノイズを除去する能力はほとんどありません。

 

ということで、リップル除去能力は非常にありがたいものですが、低い周波数専用です。

もし、LDOを使って綺麗な電源を作りたいのであれば、インダクタやフェライトビーズと組み合わせましょう。

そうすると、高周波も低周波もノイズを抑えた電源が作れます。

 

以上、小田切でした。

その電源ICは積層セラミックコンデンサ対応品か!?

案外と見落としがちな点なのでちょっと紹介したいと思います。

 

電源IC、例えばLDOでは出力側にコンデンサをつけますよね。

どんなコンデンサを使いますか?

普通のアルミ電解コンデンサ?

高分子アルミ電解コンデンサ?

タンタル?

積層セラミック?

 

電源とは低インピーダンスなほうがいいので、通常は積層セラミックを使うことが多いと思います。

 

が、積層セラミックコンデンサは数mΩという超低ESRです。

電源のパスコンとしては理想的ですが、昔ならありえなかった特性です。

 

設計が古い電源ICはそんな高性能なコンデンサは想定していません。

アルミ電解コンデンサとかESRが1Ω以上あるような低性能なコンデンサを想定しています。

そんな古い電源ICに積層セラミックコンデンサをつけるとどうなるか。

 

発振します。

 

電源がノイズだらけになります。

酷いものです。

 

ということで、レギュレータを使うときにはよく読みましょう。

「◯Ω以上のコンデンサが必要」などと書いてあればまず積層セラミックは使えません。

そういう記述がなければ大丈夫な可能性がありますが、できれば「積層セラミック対応」とはっきり書かれている部品を使いましょう。

 

以上、小田切でした。

電源ノイズが大変ならLDOにしてしまえ!

今開発している基板でノイズが問題になっています。

ノイズフロアが高くてRFの性能が出ない!

 

そして、よくよく解析しているとどうにもDCDCコンバータがノイズを出している模様。

しかしこのDCDCコンバータ、外付けしているものではなくRFICに内蔵されているDCDCです。

つまり、他のDCDCコンバータに変えると言ったことができません。

 

しかし、こういうICの内蔵電源というのは、たいてい「外部供給もできるよ」となっています。

推奨ではないのであまり詳しく説明されて居ないことも多いです。

そして、評価ボードの回路も内蔵電源をつかう回路になっています。

つまり、外部供給にするのはあくまでオプション扱いで情報が少ないわけです。

 

しかし、内部のDCDCを無効にして外部から電源を供給することで、実際にノイズが大幅に減りました。

ということで、外部から電源を供給する方向で行く予定です。

 

このように内蔵電源を使うとイマイチ性能が出ないこともある模様。

評価ボードの回路だからと言ってアートワークなどの制限もあり、コピーして性能が出るとは限りません。

そんなときは思い切ってLDOでクリーンな外部電源を使うのも手です。

 

以上、小田切でした。

電源ICのソフトスタート機能は何者か?

DCDCコンバータなど、電源ICには時に「ソフトスタート機能」というものが付いています。

そして、どの程度ソフトかをコンデンサや抵抗で調整できるようになっています。

 

「ところで、ソフトスタートってなに?」

 

という話をしたいと思います。

 

ソフトスタートがない場合で説明します。

 

ソフトスタートというものがないと、電源ICは設定された電圧まで最高速度で立ち上げます。

例えば、0V→5Vを一瞬で立ち上げてしまうわけです。

しかし、そうするとどうなるでしょうか。

いくら電源ICが電圧を監視しているとは言え、あまりに速い動きだとオーバーシュートします。

つまり、0V→6V→4V→5V・・・のようにフラフラしながら5Vに収束していきます。

たとえば、部品の耐圧がぎりぎりだと、オーバーシュートした時に部品が壊れます。

 

そしてもう一つの大きな問題は「電流を引きすぎる」という点です。

電源の先には大量のコンデンサが付いていますので、その電圧を瞬時にあげようとすると必然的に導通状態になります。

DCDCコンバータだと、瞬間的にFETに大電流が流れて焼ける可能性があります。

そして、それだけの電流を引くということは、大元の電源が一時的に電圧低下して、大元の電源で駆動している部品が動作不良を起こします。

 

このように、電圧を一気に立ち上げると問題が出てしまうのです。

 

ということであるのが「ソフトスタート機能」です。

これは設定した速度で電圧を上げていくので、オーバーシュートや電流引きすぎる問題が解決されます。

 

「なるほど、ソフトスタート機能を使えば良いんだ」

 

ということなのですが、問題はパラメータです。

デフォルト値で問題ない場合も多いですが、

大元の電源が弱かったり、先につながっているコンデンサの容量が大きいともっと遅くしないといけない場合もあります。

大元の電源の波形を確認するなどして、実機で判断しないといけないので、少々面倒です。

 

以上、小田切でした。

DCDCのインダクタには閉磁路タイプを!

DCDCコンバータには当然のようにコイル(インダクタ)を使用します。

これの選定にはそれなりに気を使います。

 

1,(当然ですが)必要な電流を流せること

2,内部抵抗ができるだけ小さいこと

3,基板に収まるサイズを選定すること

4,価格

 

お値段とサイズが反比例したりして、「小型高性能にしたら高い」となり、なかなかスペックだけで判断できません。

しかし、これだけでなくもう一つ考えて貰いたい点があります。

 

5、「開磁路」か「閉磁路」か?

 

これはインダクタの構造のことです。

インダクタは当然磁力を発生するわけですが、その磁力をどのように処理しているかということです。

「開磁路」は磁力が外に漏れ出しています。

「閉磁路」は磁力が部品から外に漏れ出さないようになっています。

 

DCDCコンバータのインダクタには激しい電流の変化があるため、激しい磁力の変化が起きます。

ということは、「開磁路」タイプのインダクタだと磁力のノイズが空中に放出されてしまうのです。

これはよくないです。

 

ということで、ノイズをできるだけ抑えるために、(価格やサイズの点で厳しい場合もありますが)可能な限り「閉磁路」タイプのインダクタを選定しましょう。

 

以上、小田切でした。

USB2.0から引ける電流は本当に500mA?

今はUSB 3.0なんて新しい規格もありますが、組み込み用途ではそんな5Gbpsなんて速度は必要とされないことが多く、今でも一つ前のUSB2.0相当で設計されることは多いです。

さて、通信部分については今回触りません。

 

今回のテーマはUSB2.0の電源です。

 

民生用機器だけでなく産業用機器でも

「通信はUSBなら、電源もUSBで取ってよ。別にACアダプタが必要とか面倒でやだ!」

と言われる時代です。

USBから電源を取る機器も多いです。

 

ですが、この時に安易に「5V 500mAだろ」と考えてしまう設計者が多いのですが、実は違います。

 

まず電圧は500mA対応のハイパワーポートを想定しても4.75-5.25Vのバラ付きがあります。

さらに、ケーブルでの電圧降下がVBUS側125mV,GND側125mV認められています。

つまり、機器に入ってくる電圧は4.75-0.125-0.125=4.5Vです。

つまり、4.5-5.25Vを想定しないといけません。

なお、これはハブを使わない場合です。

ハブを使うとさらに最大350mVの電圧降下が発生するので、さらに下がります。

 

次に電流ですが、たしかにハイパワーポート(PCなどホスト機器でローパワーポートなんて実際にないので)は500mA引けます。

しかし、「500mA要求します」とホストとネゴシエーションしないと500mA引けません。

ネゴシエーションする前はローパワーデバイスとして振る舞わなければならないので、100mAしか引くことが出来ません。

 

さらに最大負荷は「10uFのコンデンサと44Ωの抵抗の並列」を超えてはいけないという規定があります。

つまり、電源のパスコンに47uFとか使ったらアウトなわけです。

 

……とまぁ、USB対応を謳うとこういったこと全てにきちんと対応する必要があります。

が、ぶっちゃけ大変です。

民生用ならとにかく、産業向けだと「無駄にお金をかけて規格を取るより、法律的に問題なくきちんと動けばいい」という判断をすることが多いです。

その場合、「USB2.0 準拠」という書き方にして、「実質的にはUSB2.0が使えますが、すべての規格を完全には守っているわけではありません」ということにします。

ま、これで実際困らないんですけどね・・・。

(実際はネゴシエーションなんか関係なく500mA供給できますしね)

 

以上、小田切でした。

POLってなんだろう?

最近、POLと言う言葉をよく聞きます。

POLというのは「Point of Load」(負荷の点)のことです。

 

POLという単語から、そういう部品があるのか想像してしまいますが、そういうわけではありません。

ちなみに「負荷」という言葉があるので、電源用語です。

 

簡単な回路や旧来の回路では、デジタル回路が使う電源は5Vや3.3Vの単一で、電流もあまり多くありません。

現在でも小規模な組み込み回路ではこれが当てはまります。

こういう回路では、普通にLDOだとかDCDCで5Vや3.3Vを作って基板全体に供給すれば問題ありません。

 

しかし、今のデジタル回路というのは電源も多ければ、電流も多いのです。

・5V

・3.3V

・2.8V

・1.5V

・1.2V

etc…

と場合によっては10電源以上あったりします。

しかも、それぞれの電圧の正確性も必要で電流も多いです。

例えば「1.2V±0.05V、1A」の電源が必要としましょう。

すると、もし電源回路とICの間に0.1Ωの抵抗があると、1A×0.1Ω=0.1Vの電圧降下が発生して範囲を外れてしまいます。

こういう厳しい条件になると0.1Ω程度の僅かな抵抗でも問題になってしまうのです。

 

とまぁ、こんな状況から生まれたのがPOLという考え方です。

POLという部品があるわけではなく、「負荷の近くで電源を作ろう」という考えです。

POLを実際に作るには普通のLDOやDCDCを使用します。

これまでの考えでは、1.2Vが必要な部品が二つあったら、一つの電源で1.2Vを生成して分配して供給していました。

しかし、先程のように僅かな抵抗でも問題になってしまうので、長い配線になってしまうと破綻してしまいます。

POLの考え方では、1.2Vが必要な部品が二つあったら、電源を二つ使います。

まず、それぞれの部品の近くに高い電圧(1.8Vとか3.3Vとか)を供給し、部品の隣で1.2Vを生成します。

こうすると電源生成部と部品の距離が限りなくゼロになり、配線抵抗もゼロに近くなります。

これにより、大電流でも高精度な電源が供給できるわけです。

 

このように、電源が増えて大電流になってくると発送の転換も必要になります。

 

以上、小田切でした。