部品のパッケージ DIPとSMD(初心者向け)

電子部品には「DIP」と「SMD」があります。

DIPというのは、基板に差し込む前提の部品のことです。

趣味で使うような部品、ユニバーサル基板などに刺す部品です。

3端子のトランジスタが代表例です。

※コメント欄で三端子部品はDIPとは呼ばないという指摘がありました。

(ただ、実際には工場も設計も差し込む部品は全部「DIP」で通じる)

SMDは「表面実装部品」のことです。

この部品は基板に穴を開けず、基板の上に載せてハンダで固定します。

例はなんでも良いのですが、例えばこんな部品です。

http://www.rohm.co.jp/web/japan/products/-/product/DTC043EUB

実際の業務でどっちを使うか、と言われると……

実は両方使います。

手で扱うにはDIPの方が圧倒的に楽ですが、その分大きくなってしまいます。

そして、基板に穴を開ける関係で、両面に部品を載せるということが出来ません。

その点、SMDは手で扱うのは面倒ですが、小さいです。

そして、基板に穴を開けないので、両面に部品を載せることが出来ます。

ということで、小さく基板を作る場合にはSMD品を使います。

というか、最近はほとんどの部品がSMD品しかありませんので、必然的にSMD品を使うことになります。

じゃあどういうときにDIPが使われるかというと、「大きな力がかかる部品」です。

例えば、LANのコネクタです。

結構力入れて抜き差ししますよね?

SMDというのはハンダで固定されているだけなので、力をかけると取れてしまいます。

その点、DIPは基板に穴を開けて固定されているわけなので、とても頑丈です。

ということで、LANコネクタはDIPになります。

以上、小田切でした。

レギュレータの入出力間電位差とは?(初心者向け)

3端子レギュレータでももっと足が多いレギュレータでも、知識がない方が使おうとすると悩むことが色々あるんじゃないでしょうか。

 

「3.3V がほしいんだ」

→3.3Vのレギュレータを探します

 

「電流はちょっとしか使わないから100mAもあればいいや」

→3.3V出力で100mA以上出力できるものを探します

※本当はここで熱抵抗とか考えないといけないのですが、初心者向けなので省略。

 

「よし、この部品を使おう。ネットで1個ずつ買えるし」

と、こうなるのですが、使おうとした時に困りませんか?

 

「あれ、一体電圧いくつ入れれば良いんだろう?」

 

そうです。

最大電圧は規定されていますが、最小電圧はいくつなんでしょう?

こういう時データシートを見てもたいてい「最小電圧」みたいな書き方はされていません。

「入出力間電位差」という書き方をされています。

 

◯入出力間電位差

これは入力と出力の間に必要な電圧のことです。

例えば入出力間電位差が2Vであれば、

3.3Vを出力するのに5.3V以上の入力が必要です。

(5Vを入れると3Vしかでません)

 

ちなみにこの入出力間電位差は部品によって全然違います。

(中の構造が違うので)

入出力間電位差が2Vを超えるものから0.1V程度のものまで幅広いです。

基本的に耐圧が高いものほど入出力間電位差が大きくなってしまいます。(トレードオフです)

この入出力間電位差が1V以下のような小さいものを「LDO(Low Drop Out)」といいます。

なので、選べるのであればLDOなレギュレータを使いたいです。

LDOを使えば5Vから3.3Vを作るのは簡単ですが、2V以上の電位差が必要なレギュレータでは5Vから3.3Vを作ることが出来ません。

 

また、入出力間電位差は「電流」と「温度」で変わります。

(データシートの表紙に書いてあるのは代表値でしか無いので、それだけで判断してはいけません)

レギュレータのデータシートのグラフを一つ一つ見ていくと、どこかに「温度vs入出力間電位差」「電流vs入出力間電位差」のグラフがあるはずです。

面倒ですが、ちゃんと見たほうが良いですよ。

 

以上、小田切でした。

データシートの温度表記について

部品のデータシートを見ていると、温度についていろいろ表記があると思います。

今回は温度についてざっくり説明したいと思います。

 

動作温度

その部品が正常に動作可能な温度範囲のことです。

この温度範囲以外では動かないということではなく、この温度以外では「動かない可能性がある」「おかしな動きをする可能性がある」ということです。

動いたり動かなかったりすることもあります。

とにかくこの範囲は守らないといけません。

 

ただ、問題はこれは周囲温度ではなく部品そのものの温度だということです。

つまり、周囲の温度が低くても、基板が熱くて部品がこの動作温度以上になっていたらNGです。

周囲と基板の温度が低くても、この部品自体の消費電力が多くて動作温度以上になってしまったらNGです。

だから、正確には基板の温度上昇と部品の温度上昇をいれて計算しないといけません。

(これについてはいつか説明する予定……)

時々、周囲の環境温度で規定されているのか部品自体の温度で規定されているのか、非常に曖昧な記述の部品もあります。

(こまるんだよな~)

 

保存温度

これは通電していないときの温度範囲です。

-30℃環境に非通電状態で放置される製品に保存温度-20℃の部品を使ったら駄目ということです。

 

各種電気的特性は25℃で書かれていることが多い

電子部品というのは全て温度で特性が変わってしまいます。

しかしそうすると何も書けないので、大抵の部品は25℃のときの特性が表になっています。

よくよく見ると、各表の上に(Ta=25℃)などと書いてあります。

※TaはTambientのことで、周囲の温度を示しています。

たまに温度について何も書いていない表が載っている部品もありますが、そういう場合もだいたい25℃の特性と考えて下さい。

 

では25℃以外の特性が知りたかったらどうするか?

実は、分かるものとわからないものがあります。

温度と特性値のグラフがついている部品はそこから判断することが出来ます。

しかし、グラフも全ての特性について載っているわけではありません。

また、そもそも温度と特性値の関係のグラフが一切載っていないデータシートもたまにあります。

(不親切だな~と思いますが、実際にあります)

そうすると、25℃以外の特性はわからない場合もかなりあります。

 

実際は、25℃の特性値だけで設計してしまうことも多いです。

(実際は-10℃や50℃で使用されるとしても)

経験的に25℃の特性値だけで設計すると問題が出ると分かっている場合は、追加の資料をメーカーに請求することもあります。

 

以上、ざっくり説明な小田切でした。

データシートの絶対最大定格とは?(初心者向け)

部品のデータシートを見ると、いろいろな特性の表が載っていますが、

だいたい最初に乗っているのは「絶対最大定格」です。

 

さて、この絶対最大定格とは何でしょうか。

それは「一瞬たりとも超えてはいけない値」です。

これを一瞬でも超えると壊れる可能性があり、壊れても文句は一切言えない値です。

逆に言うとこれを守っていれば壊れないはずなので、問題が起こった時にメーカーに問い合わせをすることができます。

 

「なるほど、これを超えないように設計すれば良いんだな」

 

その通りです。

ただ、気をつけてもらいたいのは、

絶対最大定格=部品が壊れない値

でしかなくて、「正常動作する値ではない」ということです。

 

どういうことでしょうか。

 

ちょっとこのOPAMPのデータシートを見て下さい。

https://www.njr.co.jp/products/semicon/PDF/NJM4556A_J.pdf

 

絶対最大定格の欄に「同相入力電圧:±15V(電源電圧が± 15V 以下の場合は電源電圧と等しくなります。 )」と書いてありますよね。

ここでは「同相入力電圧」の意味がわからなくてもOKです。

電源が±15V入れていれば、OPAMPの入力端子に±15V入れても大丈夫ということです。

 

ですが、その下の電気的特性を見て下さい。

ここには「同相入力電圧:(標準)±14V」と書いてあります。

±15Vじゃないですよね。

 

つまり、

「電源に±15Vを入れた時に、OPAMPの入力端子に±14Vまでの電圧を入れても動きます」

「電源に±15Vを入れた時に、OPAMPの入力端子に±15Vまでの電圧を入れても壊れません」

という2つのことを言っています。

つまり、14.5Vをいれたら「壊れないけど動かないかもしれない」と言っています。

 

これ気をつけて下さい。

ごくたまにですが、経験者でもこの「壊れないけど動かないかもしれない」という設計になっていることがあります。

(たいてい動いちゃうんですが)保証対象外なので設計として完全にNGです。

 

以上、小田切でした。

世の中の電子回路入門書が使えない7つの理由

入門書をいろいろ買って読んでいるのですが、はっきりいって使えないです……。

ここに書いてある知識は大事だとは思うのですが、これを勉強して実際の業務上の回路設計ができるようになるとはとても思えません。

プログラミングは本などで勉強すればかなりそのまま業務で使えるので、これはどうも回路設計の本の書き方自体に問題があるとしか思えません。

ということで、だめな理由を並べてみました。

 

1,書いている人が先生

ここが一番の問題です。

プログラミングの本は本当にプログラムを書いている人が書いています。

(たまにそうでない本もありますが)

しかし、電子回路の本は大抵どこかの大学の先生が書いています。

でも、大学でやることって実務とかけ離れているんですよね……。

 

2,実例がほとんど載っていない

実際の回路を学ぼうとしたら、原理原則より実例から入っていくほうが早いです。

要は、実際に動いている製品の回路を見て、「この回路どういう意味だ?」と調べて納得していくと理解がだんだんと深まります。

ところが、回路設計の入門書を見ていると、実例がほとんどありません。

これだといろいろな理屈は頭に入っても、それを活かして実際にどうすればいいかが全くイメージできません。

具体的にイメージできない知識は正直使えません。

 

3,原理に重きを置きすぎ

「P型が~」「N型が~」そんな物理の話を延々と書いている事が多いです。

それはたしかに大切ですが、それは実務とは別です。

まず、それぞれの部品をどう使うかを知って、その後に特性を知り、そしてその特性はどういう物理原理からくるのか……という順序で学ぶべきだと思うのですが、なぜか逆からやります。

そして原理ばかり書いてあって、「はぁなるほど」と思うものの、それで実際に使う部品についての知識はほとんどつきません。

 

4,いきなり数式だらけのアナログ回路で混乱させる

物理の役に立たない話が終わったと思ったら、突然トランジスタのアナログ増幅の話が出てきます。

実はトランジスタのアナログ増幅って、めちゃくちゃ難しいです。

そして、今の御時世、ほとんど使いません。

知らなくても最悪なんとかなりますし、ここで時間をさくべきではありません。

本来はもっと回路全体の知識を身に着けた後に、必要な時に学べばいい話です。

初心者にいきなりこんなものを突きつけるのは正直おかしいと思います。

 

5,部品の使い方を説明していない

実際の回路設計というのは、適切な部品を選んで適切な使い方をするのが仕事です。

が、こういう本は部品の選び方を教えてくれない。

トランジスタとかダイオードとかコンデンサぐらいは書いてくれるけど、それだけ。

よくてもオペアンプ程度。

いろんなICの使い方が全然ない。

「え? 電源は? DCDCでもLDOでも3端子でもいいから、とにかく実践的な電源の作り方がわからないとなにも始まらないんだけど?」

「え? ICは? 今時、トランジスタとダイオードだけでなにをつくれっての?」

「え? 論理回路の説明をしといて、標準ロジックICの説明をしてないの? なんなの? 馬鹿なの?」

「え? どういう部品があって、どういうメーカが出しているのか教えてくれないの? そういう地図がないと電子部品の全体像なんて絶対に初心者にわからないよ?」

「え? データシートの読み方は? それがわからないと何も始まらないんだけど?」

と、突っ込みどころしか無い。

 

6,リアルな話が一切ない

「実際に作るとこういうトラブルがある」「こういうノイズが問題になる」

そういう話がいっさいありません。

まるでシミュレータの世界みたいに書かれています。

そして、こんな話を聞いて実際の回路が作れるわけがない。

 

7,そもそもタイトルが間違っている

「電子回路」「入門」と書いてある本を読んでいくと、はっきりいってそもそもタイトルが間違っている!!

絶対に間違っている!!

「トランジスタを使ったアナログ回路の計算式集」

「トランジスタとダイオードの物理特性数式集」

が正しい!

こんな数式、現実の設計でつかわねぇよ!!(半ギレ)

こんな特性、数式で計算するもんじゃないよ、データシートに載っている実際の値を参照するもんだよ!(ブチギレ)

その大事な事実をかきやがれーーー!!!

趣味で回路設計をしたい学生がタイトルを信じてこの本たちを買っても、ぜっっったいに回路設計なんかできやしない!!

 

っはぁ……はぁ……

ちょっとテンションが上がりすぎました。

 

……え、そこまで文句をいうなら書いてみろ?

 

……すいません。無理っす。

 

以上、小田切でした。

DCDCコンバータとLDO、どちらが効率がいい?

DCDCコンバータは電力損失が少なく、LDO・レギュレータは電力損失が多い。

一般的にはそうなります。

例えば、15Vから5V/1Aを作る場合を考えましょう。

 

◯DCDCコンバータ

5V/1Vは電力では5Wです。

DCDCコンバータの効率が80%だとすると、6.25Wの電力を入力する必要があります。

6.25/15=0.4166

15V/0.4166Aの入力が必要です。

 

◯LDO・レギュレータ

入力電流=出力電流

なので、入力は15V/1Vになります。

 

このように入力電流が倍以上必要になってしまいます。

こうなると完全にDCDCコンバータが有利です。

 

が、例外があります。

それは電圧差が小さくて電流がすごく小さい場合です。

 

品種にもよりますが、DCDCコンバータはそれ自体が数mA消費します。

ここでは仮に3mAとします。

LDO・レギュレータも品種で全然違いますが、本来の消費電流が数uAのものも結構あります。

ここでは仮に10uAだとしましょう。

 

さらに5Vから3.3Vを作るとして、その3.3Vは30uAしか消費していません。

そうすると・・・

 

◯DCDCコンバータ

出力は3.3V/30uAなので99uW必要です。

効率を80%とすると、約124uWの電力が必要です。

124u/5=24.8u

ということで、入力は5V/24.8uAとなります。

が、ここにさきほどは無視していたDCDCコンバータの消費電流が乗ります。

結局、5V/3024.8uAです。

 

◯LDO・レギュレータ

入力は5V/30uAです。

そこにLDO自体の消費電流が乗ります。

5V/40uA

 

どうでしょうか。

DCDCコンバータ自体の消費電流が大きいせいで、変換効率が良くても結局電流が大きくなってしまっています。

 

ということで、「電流が少ない時(10mA以下)」のときはDCDCコンバータよりLDOの方がいい場合がありますので、効率を考えるときには気をつけましょう。

 

以上、小田切でした。

抵抗のラインナップは?(初心者向け)

抵抗というのは自由に選べるわけではありません。

ラインナップが決まっています。

 

ええっと、手抜きしてWikipediaのリンクを張ります。

まずはここを見ましょう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%99%E6%BA%96%E6%95%B0

 

そして、普通の抵抗は5%精度なので、E24系列です。

Wikipediaを見てもらえると、

10,11,12,13,15,16…91と書いてあると思います。

ということは、普通の抵抗は1Ω~1MΩ程度のラインナップはありますので、

***************

1.0Ω,1.1Ω,1.2Ω,1.3Ω,1.5Ω,1.6Ω…9.1Ω

10Ω,11Ω,12Ω,13Ω,15Ω,16Ω…91Ω

100Ω,…910Ω

..

..

100kΩ,110kΩ,120kΩ,130kΩ,150kΩ,160kΩ…910kΩ

1MΩ

*************

というラインナップなわけです。

 

1%の高精度抵抗になると、E96系列です。

E96系列では

100,102,105,107…ですので、

************

1.00Ω,1.02Ω,1.05Ω,1.07Ω…

100kΩ,102kΩ,105kΩ,107kΩ…

1MΩ

************

というラインナップなわけです。

 

以上、手抜きな解説の小田切でした。

なぜ電源を作る必要があるのか?(初心者向け)

そもそも話です。

3端子レギュレータ・LDO・DCDCコンバータ・はてはチャージポンプなど、電源を作る方法は色々あります。

でも、こう思いませんか?

 

「5Vが必要なら5Vを作る回路なんて作らないで最初から5Vを入れればいいのに」

 

実はこれは正しいのです。

例えばUSB給電で動く機器がありますよね。

USBは5V(4.5-5.25V)ですので、その電圧で動く機器であれば電源をわざわざ作る必要はありません。

 

が、問題は今は部品によって動作電圧がぜんぜん違うんです。

昔は、「全部の部品が5V」みたいな時代も合ったのですが、

今は「CPUのコアは1.8V、通信は3.3V、モータ制御は5V」のように部位ごとに電圧が違うのが普通です。

なんででしょうか。

 

電圧が高いほどエネルギーがあるので、モータを動かしたり、長い配線の通信をしたりするには向いているのです。

ですが、高速動作させると大量のエネルギーを使う上、電圧の動作幅が大きくて高速動作に向いていないのです。

ということで、高速動作させるCPUなどは必然的に1.2Vや1.8Vなどの低電圧になります。

 

ということで、必然的に複数の電圧が必要になり、それぞれの電源を生成する必要があるのです。

今でも低速回路では「全部5V」あるいは「全部3.3V」の場合がありますので、そういう場合は外からその電圧を入れてしまえば基板の中で電源を作る必要はありません。

 

以上、小田切でした。

実際の製品でトランジスタの増幅回路って利用してるの?(初心者向け)

よもやま話チックですが、一応現実の話をしたいと思います。

 

「電子回路入門」みたいな本を読んでいると、突然「トランジスタの増幅回路」が登場して「エミッタ接地」「エミッタフォロワ―」「バイアス抵抗」などと難しい概念のオンパレードが一気に出てきます。

あれ、初心者が読むと絶望しますよね。

よくわかります。

本を書いている人は初心者がなんだか分かっていない。

それまで優しく書いていた人が、トランジスタが登場した途端に、初心者に絶対に理解できないことを平然と書き出します。

(まぁ、トランジスタの増幅回路自体が要素が多くて簡単に説明できないからなんでしょうが)

99%の人はその本を投げ出しますよね。

私も投げ出しました。

 

で、このトランジスタの増幅回路なんですが、たしかに大事です。

トランジスタでオーディオアンプでも作ろうというのなら。

でも、今の製品でトランジスタでそんな難しいことしません!!

 

ということで、実際の製品開発の現場ではどうなのかという話をします。

 

 

そもそもトランジスタのアナログ回路を設計できる人なんてめったに居ないから

専門外の人はそういった入門書を見て「回路設計の人はきっとみんなこれがわかるんだろうな~。自分にはちんぷんかんぷんだよ」と溜息をつくことでしょう。

でも安心(?)してください。

回路設計をしている人でも、トランジスタを使ってアナログ増幅なんてできる人は1割も居ません。

回路分野には「デジタル分野」「アナログ分野」があって、殆どの人はデジタル分野の人です。

アナログ分野の人なんて、本当に珍しいです。

ということで、回路設計のプロでもトランジスタでアナログ信号の増幅なんて組めないので、ぶっちゃけスルーしても大丈夫です。

(知識としては大事ですが、実際には使いません)

 

 

トランジスタ使うよりICを使ったほうが確実だから

トランジスタを組み合わせることで、自由自在に信号を増幅することが出来ます・・・が。

まず、第一に設計そのものが難しいです。

その上、趣味で作るのと違って量産が必要なので、部品のばらつきも考慮もしないといけません。

(ネットに転がっている趣味のトランジスタ回路では「この抵抗はトランジスタのばらつきに合わせて調整する」と書いて有ることが結構あります。実際の製品はそれじゃ困る)

ここまで難しいトランジスタ回路ですが、ICを買ってくれば同じことが出来てしまいます。

例えば、トランジスタを10個使う必要がある増幅回路も、1個のオペアンプというICで出来てしまうとします。

 

トランジスタは設計超難しい。

オペアンプはずっと簡単。

 

トランジスタのバラ付きがどうなるか検討するのすごく難しい。

オペアンプはどう特性がばらつくか全部メーカが資料出してくれる。

 

 

トランジスタは意外とディスコンになるから

昔であればもっと長期供給されたのでしょうが、最近は頻繁に部品が生産中止になります。

とくにIC部品よりディスクリート部品(トランジスタなど)のほうが多い印象です。

 

最近じゃトランジスタは簡単に生産中止する。別のトランジスタに変えたら動作の再検討がすごく大変。

最近じゃオペアンプのほうが生産中止になりにくい。別のオペアンプに変えるのも結構簡単。

 

 

トランジスタを使ったほうが高かったりするから

「トランジスタ=安い」「IC=高い」という印象があると思いますが、そうでもありません。

IC一つに相当する機能をトランジスタで作るともっと高くなります。

 

トランジスタ一個10円で、10個使えば100円。

オペアンプは1個60円だったりする。

(オペアンプは4回路入りなどもあるので、もっと価格差が広がる場合も)

 

 

トランジスタで作ると面積がたくさん必要だから

これは言うまでもありません。

トランジスタを何個も使ったらICの面積なんて簡単に超えてしまいます。

 

 

まとめ

と、こんなわけで今の御時世、トランジスタで増幅回路を作るメリットなんて殆ど無いわけです。

例外はこんなときです。

 

・部品一つ一つの特性にこだわった高級/趣味のオーディオ製品

・ICが使えない高周波増幅

・トランジスタ1つですむレベルの回路(LED点灯などのスイッチ用途)

 

実際の製品ではトランジスタは完全にON・OFFさせてスイッチ部品として使用します。

アナログ増幅にトランジスタを利用することはほとんどありません。

オーディオの増幅なんかは、完全にICが主役になっています。

 

以上、小田切でした!

スケジュールは週単位まで分割して期日は日単位で!

ちょっと回路設計から離れますが、実際にはとっても大事なプロジェクトのスケジュールの話をします。

 

これまでの経験上、おおざっぱなスケジュールは確実に死にます。

 

「来年の8月までに製品出荷だ」

 

これは100%死にます。

おそらくプロジェクトは最初から何も進まないことでしょう。

 

 

「来年の8月に量産だから試作を今年の12月までに終えよう」

 

これも99%死にます。

いつなにに取りかかればいいかわからないため、なにも始まらないでしょう。

 

 

「来年の8月に量産だから、試作を今年の12月、量産試作を来年の4月までに終わらせよう」

 

これでも98%死にます。

結局今何をいつまでにやればいいのかわかりません。

担当者は「まぁ、そのうち指示が飛んできたらやればいいか」と思うだけで作業は始まらないでしょう。

 

 

「来年の8月に量産だから、試作を今年の12月、量産試作を来年の4月までに終わらせよう。

試作まであと4ヶ月あるから、3ヶ月で作って一月でデバッグしよう」

 

こんな感じも80%死にます。

担当者は「4ヶ月で試作か~」とぼちぼち作業を始めますが、細かな作業の期日がないのでずるずると仕様検討などが長引き、気がついたら12月になってもまだ仕様検討していたりします。

作業は進みますが、このスケジュールは絶対に遅れます。

 

 

「来年の8月に量産だから、試作を今年の12月、量産試作を来年の4月までに終わらせよう。

試作まであと4ヶ月あるから、3ヶ月で作って一月でデバッグしよう。

そのためには、仕様を一月で決めて、回路設計を一月でやって、あとアートワークと部品手配と作成&実装を一月でやろう」

 

ここまでくるとだいぶマシですが、それでも60%死にます。

仕様を1月、みたいな指定の仕方をしていると、だいたい1月ではなく1.5ヶ月ぐらいかかったりします。(これ本当。ずるずる遅れる)

高い確率でそれぞれのステップが遅れていき、恐らく試作が完成するのは来年の2月頃になっているでしょう。

 

 

「来年の8月に量産だから、試作を今年の12月、量産試作を来年の4月までに終わらせよう。

試作まであと4ヶ月あるから、3ヶ月で作って一月でデバッグしよう。

そのためには、仕様を4週間で決めて、回路設計を4週間でやって、あとアートワークを2週間、生板作成を1週間、部品実装を1週間でやろう。

部品手配をアートワークと並行して3週間かけて、部品実装に間に合わせよう」

 

ここまでくるとだいぶ良いです。

死亡率は30%まで落ちます。

ポイントは作業を一週間単位までばらしたことです。

これで1月の作業が1.5ヶ月に伸びるということがほぼなくなります。

また、前回は1月という単位であつかったことで「アートワーク・部品手配・実装」などの1月未満のタスクが一緒くたに扱われてしまっていましたが、今回はそれぞれがきちんと個別で扱われるようになりました。

スケジュールの曖昧さはそのまま作業の曖昧さにつながり、絶対に上手く行きません。

 

ですが、また問題があります。

期日が不明確なのです。

仕様確定が4週間と言っていますが、それが終わるのは具体的にいつなのか。

今日が8/1として、8/25なのか8/31なのか9/1なのか。

そのぐらいいい、と思われるかもしれませんが、大間違いです。

1月が1.5ヶ月といった大きなズレはなくなりましたが、数日単位のズレは確実に蓄積していきます。

結果として、試作が完成するのは1月遅れぐらいになってしまうでしょう。

 

 

「来年の8月に量産だから、試作を今年の12月、量産試作を来年の4月までに終わらせよう。

試作まであと4ヶ月あるから、3ヶ月で作って一月でデバッグしよう。

そのためには、仕様を4週間で決めて、回路設計を4週間でやって、あとアートワークを2週間、生板作成を1週間、部品実装を1週間でやろう。

部品手配をアートワークと並行して3週間かけて、部品実装に間に合わせよう。

具体的な期日としては・・・

仕様決定は9/1(金)まで。これが間に合わなければスケジュール再検討。

回路設計は10/27(金)まで。これまでに部品表作成と社内レビューも実施する。

アートワーク・部品手配は10/30(月)スタートする。

アートワークは11/10(金)まで。

生板作成は11/17(金)まで。

実装は11/24(金)まで。

 

ここまでやると、死亡率は20%以下にまで下がります。

(死亡率は絶対にゼロにはなりません。トラブルが発生するときも多いので)

ポイントは、先程と違って期日がピッタリと決まっていることです。

これは超大事です。

なぜなら、日にち単位できっちり決まっていると、作業が順調に進むのです。

「あと1週間ぐらい」より「あと5日」の方が残り時間が明確になって、作業の配分がしやすいのです。

そして数日単位のズレが重なっていくこともありません。

さらに締切が明確になっていることで「守らないとまずい」という意識が生まれます。

これは本当に大きな違いです。

 

 

ということで、

・タスクは一週間単位まで分割する

・それぞれのタスクの期日は日にち単位で明確に指定する

ということでガッテンしていただけましたでしょうか?

 

以上、小田切でした!