という話について。
通常の回路設計が問題なくできるスキルがあっても、無線を扱う回路を作るとトラブル多発するよ、という話です。
無線が難しいのは当たり前なので、特に目新しい話ではないですが、今回の事例で見えてきたポイントについて解説したいと思います。
◯無線は微弱なノイズが問題になる
通常の基板でもノイズが酷いとVCCIなどの規格にクリアできなくなります。
しかし、しょせんそのレベルです。
無線になるとVCCIとはレベルが違うわずかなノイズでも問題になります。
ノイズがあっても通信はできるのですが、受信系の性能が極端に落ちるので通信到達距離が短くなります。
◯理想的なレイアウトをしないと性能が出ない
デジタル回路では多少乱暴な配線をしても、デジタル信号の伝達に影響がなければ動きます。
しかし、無線ではちょっとした不備で性能が出なくなってしまいます。
小さな基盤に押し込むとなると無理がでやすいのです。
特にGNDが弱くなるとそこにノイズが乗ってしまうようです。
◯マッチングが難しい
電波を扱うICとアンテナの間にマッチング回路という物があり、この定数を調整することでアンテナの性能を出します。
この調整「マッチング」を行わないとアンテナの性能が引き出せません。
普通にデジタル回路を設計しているだけではこの知識は身につかないので、新たに勉強するか別の専門家が必要です。
今回のプロジェクトでは別の専門家が付いていました。
◯測定が難しい
マッチングをしてから実際に通信距離の評価をしないといけませんが、
距離が長くなると研究室で行う訳にはいきません。
必然的に外でやる必要があり、広い公園のような場所かオープンサイトを借りて行うことになります。
そういう場所が近くにないとマッチングの評価作業が進みません。
こんなところもハードルの一つです。
◯電波法にクリアするための知識を得ないと行けない
電波を扱うので法律をクリアしないといけないのですが、測定方法や基準などの知識がないと手が出せません。
そういった所を勉強するのも大変なポイントです。
◯申請系が面倒
どういう風に申請するかなどのポイントを踏まえた上で、TELECなどで申請をして試験をします。
しかし、そういったところに出す書類も初見では意味がわからなくてどう書いていいかわかりません。
そういうところも窓口に確認しながら進めなくてはならず、スムーズに進まない点です。
◯トラブルが出ると追い込みが難しい
普通のトラブルはオシロスコープで各部の波形を見れば見当がつくことが多いですが、
無線系になってくるとオシロスコープでは無理です。
基本的にスペクトラムアナライザーで見ることになりますが、「~~MHzがおかしい」とわかっても実際に回路のどこが原因かはっきりしないことも多いです。
そういった面で、普通の回路よりもトラブル対応が難しいです。
とまぁ、こんな形で非常に面倒なのが無線です。
できることなら関わりたくない。
しかしそうも行かないのが実情です。
以上、小田切でした。