ダイオードを使うと電圧降下するわけですが、「よく意味がわからない」という方が結構いるようです。
ここで簡単に説明したいと思います。
回路図の例
ものすごく簡単な回路図を示します。
1.5Vの電池があって、ダイオードがあって、その先に10Ωの抵抗がついています。
電圧降下がない場合
いわゆる理想ダイオードだとこうなります。
D1の電圧降下がゼロでR1には1.5Vがそのままかかって、そしてR1には150mAが流れます。
実際には電圧降下がある
ダイオードには一般的に0.6-0.7Vの電圧降下があります。
例えば0.7Vとすると・・・
ダイオードを通った後に0.8Vになってしまいます。
なんとほぼ半分の電力(エネルギー)がダイオードに食われてしまいます。
おお、神よ、なんと非効率な!!
ちなみに、電池が100Vだったら、ダイオードで電圧降下しても99.3Vになるだけなのでたいしたことないです。
低い電圧でダイオードを使うととにかく非効率でもったいないということがわかります。
そして、電圧が0.8Vになったことでこの回路では抵抗に流れる電流も80mAに減っています。
電圧降下はいつも一定なの?
上記で電圧降下は0.6-0.7Vと書きましたが、それはいつも一定なのでしょうか?
いいえ、違います。
慣例的に0.6-0.7Vで計算しますが、実際には電流と部品によってそれよりも大きくなったり小さくなったりします。
じゃあ、電圧降下はどうやって計算するの?
もしかしたら教科書には原理や計算の式が載っているかもしれませんが、そんなもので計算はしません。
計算しません!!
そもそも使いたい部品の物性なんて開発者にはわかりませんので、計算なんかできません。
そうではなく実測データを使用します。
実測データはどこにあるか?
それがデータシートです。
知らない人が見るとわけが分からなくて頭が痛くなるデータシートですが、ここにこういう情報が載っています。
ダイオードの電圧降下をデータシートから調べる方法
秋月電子でも売っている、PANJITの1N4007という典型的なダイオードのデータシートがこれです。
http://pdf1.alldatasheet.jp/datasheet-pdf/view/14624/PANJIT/1N4007.html
このなかにこんな図があります。
「TYPICAL FORWARD CHARACTERISTICS」→「典型的な順方向特性」
今回の電圧降下は順方向に電流を流したときの特性なので、ずばりこの図が欲しい情報になります。
なんか見切れていますが、横軸が「電圧降下」で縦軸が「電流」になっています。
この図からこんなことが読み取れます。
「0.01Aを流すと電圧降下は約0.6V」
「0.1Aを流すと電圧降下は約0.75V」
「1A流すと電圧降下は約約0.95V」
上の回路では約0.1Aが流れていますので、「この回路でのダイオードの電圧降下は0.75Vぐらいだな」と予測がつくわけです。
また、電流が小さければ「0.6-0.7V」という一般常識に近い値ですが、1Aになると約1Vにもなってしまうのがわかります。
電圧降下の消費電力は?
電力P=電圧V×電流I
なので、1N4007に0.1Aを流すと、
P=0.75[V] x 0.1[A] = 0.075[W]
1N4007に1Aを流すと
P=0.95[V] x 1[A] = 0.95[W]
になります。
電圧降下の原理
そもそもどうして電圧降下が発生するのかと疑問に思うかもしれませんが、実際の所あんまりしらなくても問題ありません。
というか、そこを勉強しても実務であまり役に立ちません。
とにかくそういうものだと考えてもらってOKです。
あえていうと、ダイオードはP型半導体とN型半導体がPN結合している構造をしていて、PN結合部に0.6-0.7V程度の電圧が発生してしまいます。
そして、それが電流を流す時に障害になるので、その電圧分がダイオードで消費されてしまうわけです。
その他、よく聞かれる質問です。
Q.ダイオードを並列にすると電流を沢山流せる?
半分YESで半分NOです。
全く同じ型番のダイオードでも電圧降下にはばらつきがあります。
1Aを流した時、あるダイオードが0.6Vで、あるダイオードが0.65Vだとします。
するとこの二つを並列にしても、0.6Vのダイオードにばかり電流が流れしまいます。
ある程度は電流が分かれるので、1つの時よりマシになりますが、2倍流せるとまではいきません。
なので、普通やりません。
Q.ダイオードの電圧降下を小さくするには?
そういうときはショットキーバリアダイオードを使用します。
こちらは電圧降下が0.2-0.3Vあたりから始まるので、非常にナイスです。
以上、小田切でした。
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