初心者のあなた、トランジスタという言葉は聞いたことがあるんじゃないでしょうか。
それからFETとかMOSFETとかいう言葉も聞いたことがあるんじゃないでしょうか。
で、いろいろ調べていくと、同じようなところでトランジスタとFETが使われていたりしませんか?
LED点灯回路(トランジスタ・MOSFET)
たとえばこんな感じです。
両方共LEDを点灯する回路です。
この回路のGPIOと書かれている所がCPUに接続され、CPUの信号によってLEDがついたり消えたりする回路になります。
本屋ネットを読むとこんな記述が見つかると思います。
「トランジスタは増幅作用があり、スイッチとして扱われることもある」
「MOSFETはスイッチ素子として使うことができる」
どっちを使うのが正解でしょうか?
そもそもMOSFETとは?
「MOSFETはFETの一種です。そしてMOSFETはエンハンスメント型で……」
なんて話をしても初心者にはなんのこっちゃです。
そもそも、業務でもそんなこと考えません。
簡単に言うと「大電流を流すことができるスイッチ用の部品」と考えてもらってOKです。
実務上、そのイメージでほとんど外れがありません。
LEDを点灯させるにはMOSFETとトランジスタ、どちらがいいの?
じつはどちらでもOKです。
どちらがいいとか無いです。
好みで使ってもいいし、価格で選んでもいいです。
「そんな馬鹿な!」
いえいえ、全然OKです。
というのも、トランジスタもMOSFETもスイッチとして使用するときには、
・耐圧に問題がないこと
・必要な電流を流せること
・スイッチし切ること
ができればなんでもいいからです。
「耐圧に問題がないこと」は当たり前ですよね。
最大10Vって書いてある部品に100Vかけたら壊れますので。
「必要な電流を流せること」
例えばLEDに必要な電流が20mAだとします。
このときMOSFETやトランジスタが20mA以上流せる部品であればOKなわけです。
逆に言うと、5mAしか流せない部品だったら、トランジスタ・MOSFET関係なくその部品はダメだということです。
「スイッチし切ること」
ここがとても大事です。
MOSFETであれば「20mAを流すにはゲート(上の図のGPIOに接続されたピン)に◯V以上かけること」と規定されています。
トランジスタであれば「20mAを流すにはベース(上の図のGPIOに接続されたピン)に◯mA以上ながすこと」と規定されています。(というか計算ができます)
これを満たす必要があります。
トランジスタとMOSFETの使い分けは?
「LEDを光らせるのにはトランジスタでもMOSFETでもいいんだ。じゃあ使い分けは全然しなくて良いんだ」
YESです。
ちょっとしたLED程度ならどっちでも大丈夫です。
ですが、大電流に対処しようとすると話が変わってきます。
例えば上の図のLEDが表示用LEDではなく照明用LEDだとして、極端に「10A」だとしましょう。
トランジスタは増幅率が約100~200倍程度が多いです。
上の図のGPIOに1mA流し込むと、LEDには100mA~200mA流せるということです。
CPUの出力電流は大きくないので、例えば5mAだとすれば、LEDには500~1000mA流せることになります。
おっと、10A流せませんね。
その十分の一で頭打ちになってしまいます。
ではどうするかというと、トランジスタを2段にします。(回路は割愛しますが)
簡単に言うと、一段目で5mAを500mAぐらいに増幅して、さらにその500mAで二段目のトランジスタをくどうすることで10A流せるようにできるのです。
ではMOSFETだと?
MOSFETは電流を増幅するのではありません。
電圧をかけると抵抗値が変化する部品です。
「トランジスタは1mA流し込むと、100mA流そうとする」部品ですが、
「MOSFETは4Vかけると抵抗値が0.1Ωになる」部品です。
(上記の値は一例ですよ。部品によって違います)
なのでこの回路で5Vを入れると、0.1Ω以下になってLEDにじゃんじゃん電流が流れるわけです。
大電流を流す時に部品が少ないのは?
上のことから考えると、大電流を流そうとするとトランジスタでは2段、ひょっとしたら三段必要です。
しかし、MOSFETなら一つで済みます。
こんな風に、ある程度の電流が必要な時にMOSFETを使うと部品1つで済むことが多いです。
効率がいいのは?
一概にいえないんですが……
詳しくはトランジスタのVCE(SAT)とMOSFETの抵抗値×電流を比較する必要があります。
ここは部品選定によって大きく変わるので一概に言えません。
しかし、初心者の方にそこまでいってもわかりにくいので、ものすごく乱暴に言います。
「極端な大電流を扱わない限り、MOSFETの方が効率がいいことが多い」です。
トランジスタは入力した電流の100倍とか200倍を流す部品です。
つまり、上の回路図であれば、LEDに流す電流以外にトランジスタを動作させる電流が(わずかとはいえ)必要になります。
しかしMOSFETは電圧駆動です。電流はほとんど流れません。(数uA程度)
つまり、LEDを光らせる以外に余計な電流を使わないのがMOSFETです。
この点からしても、MOSFETの方が効率がよくなりやすいです。
静電気(高電圧ノイズ)に強いのは?
スイッチとして優秀なのはMOSFETですが、静電気などになると特性が逆転します。
トランジスタは比較的静電気に強い部品ですが、MOSFETというのは静電気にすごく弱いです。
(ちなみにCPUなどのICは中身はMOSFETでできています。だから静電気に弱い)
そのため、高電圧のスパイクノイズが発生するモーターを制御する回路はあえてトランジスタを使う例も多いです。
(最近はMOSFET駆動も多いですが)
まとめ
初心者がLEDやちょっとしたもの(数百mA程度)の物を動かすのなら、MOSFETでもトランジスタでもOKです。
しかし、それ以上になると、トランジスタであれMOSFETであれ、特性を見極めて選ぶことが必要になります。
特性を満たしているトランジスタがあればそれでよし、特性を満たしているMOSFETがあればそれでよしです。
選定についてはもうすこし上級者向けの記事でいつか書こうと思います。
以上、小田切でした!
めちゃ参考になりました!
電気初心者の気持ちを上手く汲んだとても良い記事だと思います。非常にわかりやすかったです。