アートワーク

基板のネジ穴の設計には気をつけて!

基板のネジ穴についてちょっと書きます。

 

ネジ穴、といっても基板にネジを切るわけではないので、基板に開けるのはただの穴(スルーホール)になります。

しかし、この穴を開ける際に注意する点が結構あります。

 

1,ネジの直径から0.2mm以上余裕を取る

例えば3mmの太さのM3のネジなら3.2mm以上の径を取るのが普通です。

3mmぴったりでは誤差が会ったばあいに入りませんからね。

 

2,穴から基板の縁まで1.6mm以上開ける

基板の端に穴を開ける場合、あまりぎりぎりまで寄せてはいけません。

基板が細くなりすぎるとそこが欠けてしまいます。

通常、基板の縁と穴の間には1.6mm以上のスペースを開けます。

 

3,ネジ頭orワッシャーの直径+ずれ+誤差の空きスペース取る

ネジが通るということは、ワッシャーかネジの頭が基板の上に載るわけです。

ということは、その直径の中に部品やパターンが有ると壊してしまいます。

気をつけないといけないのは、穴が少しゆるく作っているので、上下左右にネジはずれます。

なので、φ5のネジ頭であっても、ズレを考慮するとφ5.1は必要です。

さらに誤差を考えるとφ5.2は必要です。

本当はもっと欲しいですが、上記は最低ラインです。

 

4,「3」の空きスペースはパターンを完全になくすか、銅箔むき出しにして金メッキする

ネジやワッシャーでぐりぐりやったらレジストがはげてしまいます。

なので、このスペースには一切パターンがないのが理想です。

しかし、それができない、あるいはネジを通してGNDを外と接続したいという場合があります。

その場合、GNDベタを置いてレジストをかけないで銅箔むき出しにします。

しかし、銅箔は錆びるので金メッキをするのが適切です。

 

5,裏面も同じことをする

うっかり忘れそうになりますが、基板の裏側にも筐体の受けなどがあたりますので、同じことを考える必要があります。

 

このように、意外とネジは面倒です。

 

以上、小田切でした。

CPUの下にはGNDを!

アートワークで配線をすると、ついついCPUの下に配線を走らせてしまいますが、それはよくありません。

なぜでしょうか。

 

CPUの中は高速の信号が飛び交っており、CPU自体がノイズをばらまく原因です。

ノイズを吸収するのはGNDベタですので、CPUの直下に置くことでノイズを吸収させるのです。

つまり、ノイズを出来るだけばらまかないために直下にGNDベタが必要なのです。

これが一点。

 

さらに、ノイズに一番近いCPU直下に配線を置くとその配線にノイズが乗りやすいのです。

つまり、CPU直下の配線の信号品質に問題が出やすいから。

これが二点。

 

さらに、CPUの周囲にはパスコンがあったりプルダウン抵抗があったりして、周辺の配線には安定したGNDが必要です。

なので、CPUの下でぶった切れているようなGNDベタはよろしくありません。

これがで3点。

 

このように、複数の理由がありますので、よーく気をつけましょう。

 

以上、小田切でした。

意外と考えないといけないLEDの配線

アートワーク(基板設計)で配線を引く時、リセット信号や高速信号線には注意します。

リセット信号はできるだけGNDガードし、それが無理でも高速信号とは並走しないようにします。

高速信号はも同じように可能な限りGNDガードします。

 

そんな中、遅い信号はほとんど考慮しません。

遅い信号とは、スイッチ・ENABLE信号・LEDなどです。

こういうものは時々しか動かず、ほとんどHかLに固定されています。

遅いのでほとんどノイズをまかないのです。

 

が、今回ちょっと問題になってきたのは、LEDがPWM駆動しているという点です。

普通のLEDはON/OFFだけですが、PWM駆動となると下手すると1MHz近い速度で駆動します。

(普通はもっと遅いと思いますが・・・)

そうなると、ノイズをまくようになり、リセット信号と並走するのはちょっとまずくなってきます。

 

当初、LEDはOn/Offだけの予定だったので気にしてなかったのが、PWMになり配線に苦労……というパターンです。

 

ということで、普通は見逃しがちなLED配線ですが、PWM駆動の場合もありますのでご注意を。

 

以上、小田切でした。

プリント基板のプリフラックスと金メッキ

プリント基板を作る時に、層構成以外にもう一つ重要な物がありました。

書き忘れていたので書こうと思います。

 

それは「表面処理」です。

 

基板というのはガラス繊維と銅箔が積層した物体です。

表面にはレジストというものがかかっていて、その部分は銅箔は露出していません。

しかし、部品が乗るパッドの部分はレジストがかかっておらず、銅箔が露出しています。

 

なお、銅は錆びます。

十円玉を見ればわかります。

 

そこで、プリント基板(生板)を作る際に銅箔露出部分に「プリフラックス処理」というものをします。

要は銅箔を守るためにフラックスを塗ってあるのです。

 

これで一安心・・・ではありません。

何ヶ月も放っておいたらだめになります。

なにより実装の時にフラックスはなくなってしまいます。

ということは、実装工程で部品を載せて製品に組み込まれてしまうと、部品が乗らなかったパッドは銅箔が露出した状態になってしまいます。

そうなると、そこから錆が入って広がっていって、配線が切れたりショートして故障に至ります。

 

そういう場合にどうするかというと、部品が乗らないパッドにも「ハンダだけ」載せます。

そうするとハンダで保護されて、その下の銅箔は錆びなくなります。

 

ということで、これで良さそうに見えますが、そうもならない場合があります。

例えばPCI-EXPRESSカードだとか、基板の隅がコネクタになっていますよね。

そこにハンダを載せたら厚みが変わってしまいますし、そもそもハンダは激しい摩擦を想定していません。

さらに、それ以外によくあるのがネジ穴がある場合です。

ネジ穴の部分がGNDベタやフレームGNDになっていて、ネジ穴から筐体にノイズを逃す仕組みなっていたりします。

まぁ、ネジ穴の部分にハンダを盛ることもあるかもしれませんが、普通はしません。

 

こういう時に使うのが「金メッキ」です。

プリント基板を作る際に銅箔すべてが金メッキされた状態になるので、錆びません。

これでハンダなど載せずにネジを締めたり、コネクタにしたりできるようになります。

もちろんコストは上がります。

 

以上、小田切でした。

GNDベタの穴はなんとかフォローする!

通常の4層基板では、2層目はGNDになっていて、そこに他の層からVIAを通すことで全層に渡って頑強なGNDが作れます。

しかし、配線が多く、2層目にも配線が来てしまうこともままあります。

そうすると、2層目が綺麗なGNDベタではなく、穴が空いたベタになってしまいます。

穴も小さければいいですが、配線が長かったりすると大穴が空くことになります。

 

ベタに大穴が開くとどうなるのでしょうか。

 

答え:ループ(コイルになる)

 

穴のまわりがコイルになってしまい、そこで共振したりします。

現在、それが原因と思われるトラブル発生中です。

 

そうなると、その穴を塞がないといけません。

しかし、もともと苦しくて2層目に配線を走らせているので、その配線をなくすことは難しいです。

 

そこでどうするかというと、他の層でカバーします。

その穴の中を通るようなGND配線を他の層に作り、VIAでつなぎます。

例えば、長い穴があって、その中央を他の層で繋いだとしましょう。

そうすると、大穴の外周がそのままループになっていたのが、VIAを通して中央の配線で繋がれることにより、外周が半分のループ二つになります。

こうすることにより、共振周波数が上がります。

ループは消えないのですが、周波数が上がることにより共振しにくくなっていきます。

 

文字ばかりでは正直わかりにくいと思いますが。

是非ともよーく考えてみてください。

 

以上、小田切でした。

アートワークの確認は結局人の目

閑話休題的に。

アートワークというのは配線を引き回すので、回路図と違ってわかりにくくて良いのか悪いのか判断するのも難しいです。

しかし、最終的には人が見るしかないという話です。

 

実はアートワークを確認して自動で「ここが危ない!」とか警告してくれるチェックソフトがあります。

 

ところが、実際に使用してみたことがあるのですが、単純なルールで判断しているだけであまり適切とはいえませんでした。

例えば「電源ピンから◯mm離れたところにコンデンサがあったら、『パスコンが遠い』と表示する」みたいな感じです。

しかし、実際には部品の置き方には制限があるので「そう言われてもこうしかやりようがないよ」となるわけです。

それから、「この信号は速いからこういう風にしないといけないけど、この信号は遅いからそんなのいいんだよ」みたいな回路図から読み解けない条件もあります。

チェックソフトは結局一律で見ているので、そういった判断はできません。

もちろんソフトウェアは進化していくので多少は良くなっていくでしょうが、結局ルールで判断しているだけなので限界があります。

 

補助として使うことは出来るかもしれませんが、「あまりに悪いパターン」を見つける程度が限界のように思います。

そこそこの設計者が作ったアートワークをチェッカーソフトに入れても、先程のパスコンのように「だってどうしようもないじゃん」みたいな警告が大量に出るだけであまり意味ありません。

 

ということで、ソフトウェアの進化に期待しつつも、現状では設計者自身のスキルを向上していくしかありません。

 

以上、小田切でした。

アートワークで部品登録は危険がいっぱい

基板のアートワークをするときはいろいろ注意点が有りますが、見逃しがちな点、「部品登録」について書きたいと思います。

 

部品登録というのは、基板に配置する部品のサイズ・シルク・パッド形状などを登録することです。

 

「ん?なんでそんなところ気をつけないといけないの?」

 

と思うでしょうが、実際今それでトラブル出てます。

 

部品登録というのはどうやるかというと、メーカーが出している資料に沿って登録します。

データシートや別資料に部品サイズや推奨パッドの記載があるので、それにそって登録していきます。

 

「寸法を入れ間違えるとか?」

 

いやいや、そういうわけじゃありません。

アートワーク業者で作成した部品登録を自分でダブルチェックしていますが、寸法の入力ミスというのはめったにありません。

ICなども、レイアウトが決まっているのでめったに間違えるものじゃありません。

 

問題は……ICや抵抗以外の特殊部品です。

 

例えばコネクタです。

今回問題になっているのはDCジャックです。

DCジャックというのは「プラス極」「マイナス極」「挿入検出ピン」の3つの端子が出ているのですが、図の記載がわかりにくかったのです。

絵にピン番号など書いてあるのですが、部品の裏面の絵なのか基板上のレイアウトなのかわからずそれを間違えてしまいました。

つまり、見ている絵の解釈が逆になってしまって、ピンがひっくり返ってしまったのです。

 

さらに、どちらが差込口かも図から読み取れない状況でした。

ということで、差込口が基板の内側を向いています。

 

さらに、DIP部品なのに図では穴ではなくパッドに見えたため、穴が空いていないなんてこともありました。

 

つまり、この部品に関してボロボロです。

使い物になりません。

 

このアートワーク業者さんは経験豊富で他の部分は問題なかったのですが、このDCジャックだけが問題でした。

つまり、コネクタ類のようにバリエーションが有りすぎる部品は図がわかりにくいと、経験があってもミスをしてしまいます。

こういう紛らわしい部品は現物を入手するなどして事前に確認を取らないと、酷いことになります。

 

以上、小田切でした。

実装精度を気にしないといけない部品

量産品の基板に部品を搭載するのは実装マシンです。

 

1,基板にはんだペーストを塗り

2,はんだペーストの上から実装マシンが部品を搭載し、

3,リフロー炉に入れてはんだペーストに熱が入ってハンダが固まり、

4,いっちょ完成!

 

ということです。

 

「人がやるのではなく、メカがやるんだから部品なんてそんなずれないでしょ。実装精度とか気にしなくても大丈夫でしょ」

 

だいたいはそうなんです。

0603みたいな1mmよりはるかに小さい部品でもだいたい大丈夫です。

0.5mmピッチのめっちゃ細かいピンが出ているICでもだいたい大丈夫です。

 

が……実は鬼門が有ります。

 

実装マシンくんはとても正確です。

上下左右のズレなんて0.1mm程度です。

 

ところが、はんだペーストに載った後はんだペーストの上で部品がぬる~と動いてしまうのです。

これはどんなに実装マシンの精度が良くても関係ありません。

 

「絶望的じゃないか!」

 

実は大抵の場合問題ありません。

はんだペーストの上に部品の端子が載ると、粘性があるので端子ははんだペーストの中で上下左右に移動しても外れることはないのです。

 

・実装マシンくんが超絶精度で、超絶小さいパッドに塗られたはんだペーストの中央に超絶小さい部品の端子をきっちり置く

・部品がはんだペーストの上でちょっと滑る

・部品の端子がパッドの中央からずれる(でもパッドからは外れない)

・この状態で炉に入って固定される

 

とこのように、多少ずれてもパッド内での話であり、電気的にはなんの問題もないわけです。

 

「なんだよ驚かせやがって。何の問題もないんじゃないか」

 

ところが電気的にはOKだけじゃだめなのがあるんです。

 

「コネクタ」です。

 

パッド内で端子が移動するだけなので電気的には問題ありませんが、位置がずれてしまいます。

通常、縦横方向のズレはあんまり問題ありません。

問題は回転です。

僅かに2-3度ずれただけでもダメになる場合があります。

 

例えば、こんな基板を考えましょう。

・PCI-EXPRESSのコネクタがついている

・その数cm先にPCI-EXPRESSカード固定用のネジ穴が開けてある。

 

はい、ここでPCI-EXPRESSのコネクタが2-3度でも回ったらどうなりますか。

PCI-EXPRESSカードを指した時、カードのネジ穴と基板のネジ穴が合わなくなります。

つまり、アウト!

 

ということで、少しでも位置がずれたらアウトなコネクタを扱うとき「だけ」は実装精度を気にしないといけません。

 

以上、小田切でした。

インピーダンスコントロールとは?

アートワーク設計で「インピーダンスコントロール」という物があります。

線路の特性インピーダンスをコントロールするわけですが……

 

まず、この「特性インピーダンス」というのが非常に説明しにくいものなんです。

ここでささっと説明するのは非常に難しい!!

ここで数式を駆使して理論をかざす気もないし、そんな元気もありません(汗;

 

あえて言うならば、「信号が伝わっていく速度」と考えて下さい。

この理解でもまちがっちゃいません。

配線というのはインダクタでもあり、近くのGNDとの間にはコンデンサが形成されます。

つまり、急激な電圧変化があってもインダクタが阻害して、さらにコンデンサに充電する必要があるためさらに電圧変動が阻害されます。

つまり、配線の上を電気は光の速度で駆け抜けていきません。

インダクタやコンデンサの阻害を受けてゆっくりすすんでいくんです。

(電気=光の速度と思っていると「え?」と思うかもしれませんが、これがリアルです)

 

ということは、配線の太さ・配線とGNDの距離といったもので、インダクタンスやコンデンサの容量は変化するので、電気の進む速度は変化するわけです。

この速度をきちんとコントロールするのが「インピーダンスコントロール」です。

 

これが必要なのは、特定の高速信号です。

・USB

・Ethernet

・HDMI

こんなような100MHz超え信号はだいたい全部インピーダンスコントロールが必要です。

 

まずこう言った信号を伝えるケーブル(USBケーブル・LANケーブル)自体が、「インピーダンスコントロール」されています。

なので、基板の上の配線も同じように「インピーダンスコントロール」します。

 

そうしないと、基板上でゆっくり進んでいた信号が突然ケーブルに入った途端に早くなったり、逆に遅くなったりします。

長い配線の中でこういう変化があると、そこで信号が劣化するので信号が正しく相手に伝わりません。

ということで、基板上のインピーダンスコントロールをちゃんとして、ケーブルと揃えないといけないわけです。

 

なんとなーくわかりましたでしょうか?

 

以上、小田切でした。

アートワークではDCDCコンバータに要注意!

DCDCコンバータというのは数百kHzから数MHzというそれなりの速度で動きます。

そして、中身は方形波なのでスパイクノイズも凄いです。

そして、さらに大電流です。

 

……ということは、ノイズの塊なのです。

これをなんの考えもなしに基板設計すると酷いことになります。

これに対処するために2つのことを考えます。

 

◯DCDCの電流路を最短にする

だいたいDCDCコンバータというのは

入力パスコン→インダクタ→出力パスコン

というように接続されています。

(間にDCDCコンバータの制御ICが入る)

電流は入力パスコンから出力パスコンまで流れて、最後にGNDを通って入力パスコンに帰っていくわけです。

この経路が長いとノイズを撒き散らします。

なので、入力パスコンと出力パスコンのGNDを出来るだけ近くにして、帰りのGNDの距離を縮めます。

さらに、部品をできるだけ密集させて行きの距離も短くします。

 

◯ノイズを嫌う配線から離す

まずはアナログ回路です。

微小な電圧変化を監視する回路などがある場合、DCDCから極力離します。

そうしないとアナログ信号にノイズが乗ります。

それから見落としがちなのは水晶振動子です。

水晶振動子はuWレベルの微弱な電力で動いているので、ノイズに敏感です。

 

こんな風にDCDCの配置には気をつける必要があります。

 

以上、小田切でした!