信頼性試験

信頼性試験の基準ってどうやって決めるのか?

またもや信頼性試験ネタ。

温度をかけたり、落としてみたり、静電気かけてみたりと、いろんなことをやるのが信頼性試験ですが、自分で決める立場になると難しいものです。

いったい、信頼性試験の中身やレベルってどうやって決めるんでしょうか。

 

開発を受ける立場で「こういう試験をやってくれ」と言われて実施するなら困りませんが、決める方になると途方に暮れます。

 

そもそも、信頼性試験の立場は法律でもなんでもありません。

電波法やPSEなど法律と関係する試験もありますが、ほとんどの信頼性試験は法律と全く関係ありません。

また、信頼性試験の様々なことがJISで定められていますが、JISは規格であって法律ではありません。

だから、「これをやればOK」みたいな絶対的なものがありません。

 

つまり、信頼性試験というのは「業界慣例」だとか「会社のリスク回避」でしかないのです。

極端な話、電波法などが関係する部分以外はやらなくても法的な問題はないのです。

実際の所、信頼性試験なんてほとんどやらないで出荷してしまうとこもあります・・・

 

さすがに全くやらないのは危険ですので、やるべきです。

全く確認ができてないわけですから、出荷した途端にトラブルが多発してしまいます。

もしその製品の業界で基準となっているものがあれば、そのレベルの試験をしたほうがよいです。

もしそういったものがないときは、実際に扱われる場面を想定して試験の基準を決めないといけません。

ここの話は大変なのでいつかそのうち・・・

 

以上、小田切でした。

静電気イミュニティ試験の基準

ESD試験の基準はだいたい他所からの要求で決めるものですが、自分で決める立場になると決めるのが結構難しいです。

そうしたら、なんかいい表を見つけてしまいました。

ネット上にあるものではないので、内容だけ紹介します。

 

これはあくまで目安なので、参考程度にお願いします。

これを基準にどこまで厳しくするか、という考えでよいように思います。

 

試験対象
機器
接触放電 気中放電 間接放電 判定基準
家電
照明
商業・軽工業
工業
4kV
10回
8kV
10回
4kV
10回
B
情報機器 4kV
25回
8kV
10回
4kV
25回
B
医療用 2,4,6kV
10回
2,4,8kV
10回
6kV
10回
B

 

以上、小田切でした。

静電気対策の方法

信頼性試験で実施する静電気試験ですが、試験のためだけでなく実際の現場でも静電気は飛ぶので、この対策は非常に重要です。

ということで、代表的な静電気対策を簡単に列挙したいと思います。

 

◯電源

まずは電源です。

電源は静電気だけでなく雷サージなどもあるので、高電圧の対策は必須です。

そして、この部分は逆刺しの可能性も考慮して、双方向の高電圧保護部品である「バリスタ」を使用することが多いです。

普通のツェナーダイオードですと電源逆刺しの際に、ツェナーダイオードに大電流が流れて破損してしまいます。

 

◯インターフェース部

コネクタ類です。

コネクタに人が触れる場合などに静電気が飛んできます。

なので、インターフェースの各線にはツェナーダイオードかクランプダイオードを入れます。

普通のデジタル信号線には負電圧が入ることがありませんので、双方向の保護素子であるバリスタは必要とされません。(使ってもわるくないけど)

ツェナーダイオードはGNDと信号線の間に入れ、ツェナーダイオードの降伏電圧以上の電圧をGNDに逃がすようにします。

クランプダイオードは、「信号線とGND」と「信号線とVCC」に入れ、VCC以上またはGND以下の電圧をGNDやVCCに逃します。

 

◯人が触れる部分

スイッチなどです。

ここもツェナーダイオードかクランプダイオードを入れます。

 

◯基板外周

基板はたいてい筐体に入りますが、筐体の隙間から静電気が入ってくることが有ります。

なので、基板の最外周に部品があるとそこに静電気が飛んだ時に部品が壊れてしまいます。

最外周をGNDにしておくことで、筐体の隙間から飛んできた静電気がGNDに逃げるようにします。

 

◯ネジ穴周辺

ネジ穴も静電気が飛んでくる場所です。

なので、基板に開いているネジ穴の近くにGNDではなく部品があると、部品を壊します。

ネジ穴はまずGNDを置いて、そのまわりに部品を配置します。

 

◯金属部は部品から離す=GNDに接続する

金属がある製品だと、静電気はまず金属に飛びやすいです。

なので、金属の近くに部品があるとそこを静電気が通ったときに部品を壊します。

金属はGNDに接続するなどして、静電気が部品を通らないように配慮します。

 

代表的なところではこんなところでしょうか。

 

以上、小田切でした。

静電気イミュニティ試験について

信頼性試験の一つである静電気イミュニティ試験について簡単に解説します。

 

イミュニティは「電気的ストレスに耐えること」なので、「静電気ストレスに耐える試験」ということになります。

つまり、静電気で壊れないかを調べるための試験になります。

 

まず、静電気を発生させるための装置と、その静電気を製品にかける「ガン」がセットになった機材を使用します。

試験者はそのガンを製品に当てて静電気をかけることになります。

 

製品を稼動状態にした状態で静電気をかけていき、都度正常動作するか確認をしながらすすめていきます。

 

◯接触放電

金属部に人の手が触れたときを想定する試験です。

ガンに尖った電極をとりつけ、電極を金属部にあてて直接静電気を打ち込みます。

 

◯気中放電

非金属部に人の手が触れたときを想定する試験です。

この試験では、先が丸くなっている電極をガンに取り付けて試験を行います。

まず製品からガンを離した状態でガンの引き金を引いて、電極に帯電させ、その状態ですばやく試験部に近づけます。

こんな方法の試験なので、「どの程度離して引き金を引くか」「試験部に近づける速度が早いか遅いか」で結果が大きく変わってしまいます。

つまり、この試験は、試験する人の癖で結果が結構変わります。

 

◯間接放電

製品の横に10cm離して大きな金属板(470kΩでグランド接続)を置き、そこに静電気を印加する試験です。

変な試験ですが、直接静電気をかけても正常なのに、近くで静電気が流れると動作不良を起こす機器があるそうです。

そういった場合を想定した試験です。

 

さらっと説明しましたが、細かいことを知りたい方は「IEC61000-4-2」で調べてみましょう。

 

以上、小田切でした。

落下試験は結構きついよ!

信頼性試験の中で「落下試験」というものがあります。

その名の通り、製品をコンクリートの上に落下させて、破損・機能異常がないかを確認する試験です。

 

詳しくは「JIS C 60068-2-31」を参照するといいです。

JISの公式HPに行って、上記型番で検索すれば無料で閲覧できます。

(印刷はできない)

 

さて、落下試験なのですがぶっちゃけかなりのものです。

1kg以下のものですと、(JIS推奨では)1mの高さからコンクリートに落とすことになります。

 

まず筐体が頑丈な必要があります。

簡単なツメで止めてある程度ではまず開いてしまいます。

ツメで引っ掛けるなら相当頑丈にしないといけません。

 

次に基板です。

普通の部品はそれほどダメージをうけませんが、重い部品がついていると根本にダメージが来てしまいます。

背の高い部品・重い部品がある場合は、ネジ止めやシール材の塗布など固定を強化する必要があるかもしれません。

 

今回、私のケースでは、基板間コネクタで取り付けてある小基板が吹き飛びました。

まぁ、そんな衝撃想定していない基板だったので壊れて当たり前なのですが……

さらに両面テープで止めても取れてしまうという状況でした。

基板間コネクタの両端でネジ止めしておくぐらいの想定をしないと1mの落下は耐えられないようです。

(筐体にゴムなどついていればマシなのかもしれませんが・・・)

 

ということで、落下試験を考えて事前に設計ができるといいですねぇ……

 

以上、小田切でした。