回路設計と聞いて、
「まぁ、なんかあの四角と線でできた不思議な絵を書いているんだよね」
ぐらいは想像できても、一体何をしているのかイメージできない人が多いんじゃないでしょうか。
また、回路がある程度分かる人でも、実際の回路設計技術者がなにをやっているかなんて知らないと思います。
今日はそこについて簡単に説明したいと思います。
いきなり回路を引くわけじゃない
「回路設計の仕事なんだから、なんか頼まれたらすぐに回路図を書き始めるんでしょ?」
そんなわけはない。
仕事は段取りが9割というじゃないですか。
というか、まず、それはできないです。
自分も最初にこの仕事を始めたときはいきなり引こうとしましたが、先輩に滅茶苦茶怒られました。
きっとあなたも怒られることになるのでそれは止めましょう(笑)
仕様を引き出す
まず最初に営業経由でお客さんから仕様がやってきます。
その資料は様々です。
プレゼン資料みたいになっていて、目的・デザイン・機能・サイズまで規定されているものもあれば、
箇条書き程度しかないものもあります。
しかしどちらの場合も、設計者ではない人が作っている資料なので、基本的に設計者が欲しい情報が入っていません。
例1:
「ん? LEDってあるけど、これ何色なんです?」
「赤と緑の二色LEDで」
「書いてないじゃないか……」
例2:
「USBって書いてあるけどこの文面だとUSBから充電するだけってことだよね?」
「いやデータ通信もするらしい」
「この文面じゃ分からないよ」
例3:
「スイッチか~、プッシュタイプでいいのかな?」
「シャッターボタンと保存ボタンと電源ボタンが欲しいって」
「ちょっとまって、スイッチ3つとか読み取れないから」
例4:
「後でソフト屋さんに確認しないといけないけど、CPUのROMは64kBもあれば十分そうだね」
「いや、なんかログデータを保存するので1MB必要なんだって」
「ちょっとまって、この資料からそんなこと読み解ける人が居たら呼んできてよ」
例5:
「なるほどこういう機能でこういうインターフェースね。……ん、ちょっとまった、こんなサイズで収まるわけがないと思うんだけど」
「え? 大丈夫って言っちゃったよ、あはは」
「無理ゲーすぎる」
なにやら愚痴っぽい会話ばかりになりましたが、まぁ実際こういうものです。
渡された資料を信じ込んで作ると大変なことになるので、ちょっとでも怪しいと思ったところはとにかく聞きまくります。
この時に「お客さん側の担当者」と「自分」の間に人が何段もあると大変です。
(例えば、自分→会社の営業→商社→客先会社の営業→客先会社の上司→本当の担当者)
伝言ゲームで話が変わったり、返信が来るまで一週間以上かかったりして、一向に話が進みません。
なので、あなたが担当者になったときは、非公式でもいいので向こうの本当の担当者とのホットラインを作ることを激烈におすすめします。
仕様を決める
いろいろ確認しながら仕様を確定していき、なんとか仕様をまとめます。
例えば、
・製品の概要
・電源
・サイズ
・インターフェース
・LED
・スイッチ
・CPU型番
etc
いろいろ。
設計書の作成
上で決めた仕様とそれを実現するための部品を選定します。
そして、上の仕様と部品と選定理由などを書き下した設計書というものを作ります。
この書類を書くのが非常に大変なんですが、やっぱり作っておかないと後でトラブル出ます。
この設計書についてはいずれ語りたいです。
回路図作成
ここまで来てようやく回路図を引けるようになります。
設計書ができたタイミング、あるいは作りながら回路を引いていきます。
同時になる場合も多いです。
仕様や部品の選定は回路図を引く前にも決められますが、計算する部分もあるので、そこは回路を引きながら計算の中身を設計書に記述することになります。
後工程へ
回路図ができたらアートワーク(基板のパターン設計)に進みます。
ここは回路設計者と違う人や外注業者の場合が多いです。
おおまかにですが、こんなイメージです。
以上、小田切でした。