LED(発光ダイオード)に静電気が飛んだときの保護について

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

LEDというのは筐体表面に人が触りやすいところに配置されます。

 

普通、

「でも、筐体の素材が間に入っているので、まぁ大丈夫でしょ」

と思うんですが・・・

 

実のところ、LEDの周りを筐体が完全に覆っていればめったに問題ありません。

問題は、筐体の合せ目にLEDがある場合ですよ。

例えば、筐体が上と下に分かれていて、カパッと組み合わせる。

そうするとその組み合わせた部分にわずかながら隙間ができます。(段とかついていて密閉に近い構造でもわずかな隙間がある場合があります)

すると静電気はどんなわずかな隙間も突き抜けていく嫌な奴ですので、そういった隙間から基板に侵入します。

そこにLEDがあると……アウチ! ってなわけです。

 

そうすると、特に基板の隅にあって筐体の隙間に近いLEDには必ず対策を加えないと危ないです。

恐らく静電気試験の際にLEDが死ぬでしょう。

 

ということで、どういう対策を加えるかということですが……

正直な話、適当に適当な耐圧のバリスタを加えるだけでも案外なんとかなっちゃったりします。

真面目に部品選定していなくても効果が大きかったりするんですよね。

でも、今回は真面目に考えてみたいと思います。

 

典型的なLED点灯回路

 

LED静電気1

 

よくあるLED点灯回路はこんな感じです。

LEDを電源につっておいて、トランジスタで電流を引いて光らせます。

 

さて、静電気が問題になるのはハイインピーダンスなラインです。

つまり、LEDであれば光っているときより消灯しているときのほうが静電気に対して無防備なわけです。

ということで、消灯しているときの回路を示してみましょう。

 

典型的なLED点灯回路の消灯時

 

LED静電気2

 

トランジスタがONしていないのでハイインピーダンスになっています。

ちょっと乱暴ですが、抵抗R1の先に何もつながっていないのと同じような状態と考えられます。

すると上のような気持ち悪い回路図になります。

 

 

じゃあ、ここで静電気を掛けてみましょう。

+8000Vの静電気を帯びた迷惑な人間が筐体の隙間に触って静電気がLEDに飛んできます。

LEDのど真ん中に飛ぶとは考えにくいので、LEDのアノード側に飛んだときとカソード側に飛んだときで考えましょう。

 

消灯時のLEDのアノード側に+8000Vが飛んだ!

LED静電気3

 

見ての通り、+8000VはVCCより絶対に高いので、VCCに逃げていきます。

LEDの中を通っていかないのでLEDは無事です。

電源は低インピーダンスなので静電気ぐらいでは普通は壊れないので大丈夫でしょう。

 

 

消灯時のLEDのカソード側に+8000Vが飛んだ!

LED静電気4

 

カソード側に+8000Vがかかりました。

抵抗の先は絶縁状態ですから、流れやすいVCCに流れようとします。

しかし、そのときに途中にLEDがあるわけです。

静電気はどうするでしょう?

静電気さんはそんなことは気にしません。

自分の電圧でゴリ押しして突き抜けるんです。静電気とはそういうやつです。

LEDの逆電圧って普通5V程度ですよ?

そこに8000Vがかかってご覧なさい。

100%ご臨終です。

 

 

LEDと逆方向にダイオードをつなげてみよう!

 

LED静電気5

 

ということで、LEDと逆方向にダイオードを並列接続します。

LEDの逆方向電圧は5Vなのに対して、普通のダイオードの順方向電圧は0.6V程度なので、ダイオードの方が流れやすいわけです、

ということで、+8000Vはダイオードを流れていくのでLEDは壊れずにすみます。

 

ここまではOKです。

しかし、忘れちゃいけない。

静電気には+8000Vだけじゃなくて、-8000Vなんてものもあるんです。

 

消灯時のLEDのアノード側に-8000Vが飛んだ!

この回路にたいしてアノード側に-8000Vを掛けてみましょう。

LED静電気6

VCCからアノードに電流が流れるだけです。

このときはLEDに電流が流れないので無問題です。

 

次にカソード側に-8000Vをかけてみましょう。

 

消灯時のLEDのカソード側に-8000Vが飛んだ!

LED静電気7

さて、こんどはLEDの順方向側に静電気が流れることになります。

ダイオードの逆方向電圧は普通100V以上あるので、順方向電圧2-3V程度のLEDの方が流れやすいわけです。

「LEDの順方向にすごく大きいピーク電流が流れる」

というわけです。

これがOKか?

これが微妙なんです。

100%壊れるとはいえないですが、LEDは弱いので静電気のピーク電流で死ぬ可能性もあるわけです。

 

 

ツェナーダイオードを使用したLED保護回路

LED静電気8

ということで、ダイオードをツェナーにしてみます。

このツェナー電圧はLEDの順方向電圧より大きい必要があります、

そうでないと、LEDが発光する際の電流がツェナーに逃げてしまいます。

ここでは5.1Vにしてみました。

-8000Vの静電気が入ったときのサージ電流はどれほどでしょうか。

正直わかりませんが、相当大きいのは間違いありません。

その時のLEDの順方向電圧とツェナー電圧のどちらが大きいか?

これもわかりません・・・。

しかし、想定としては、サージ電流が大きすぎてLEDの順方向電圧は7Vとか18Vとか大きな値になり、それに対してツェナーダイオードのツェナー電圧の方が小さくなり、電流はツェナーダイオードを流れていくことになります。

そうすると、ツェナーダイオードのサージ耐性はLEDよりあるのでLEDを壊さずに済むわけです。

 

 

まとめ

これまでのことをざっくりまとめると。

 

静電気耐性は

保護なし<<<<<<<<<並列にダイオードを逆方向に接続<<並列にツェナーダイオードを逆方向に接続

となります。

 

逆方向電圧から保護するにはダイオードが必須で、順方向のサージ電流から保護するにはツェナーダイオードが必要、ということです。

ダイオードだけでも大丈夫だと思いますが、条件によってはツェナーにしないとダメかもしれない、という考察になります。

 

まぁ、ぶっちゃけた話、どうせ対策するならツェナーにするのが無難です!

 

以上、小田切でした!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

お問い合わせ

電子回路の専門家がいない会社さん・個人事業主さんをターゲットとした、

電子回路のコンサルティングを行っています。


電子回路設計 コンサルティング 問い合わせページ

SNSでもご購読できます。