2018年 3月 の投稿一覧

静電気でどうしていいかわからないときの一歩目

静電気で問題が起こることは多いですが、問題の解析が難しいことも多いです。

わかりやすいのは部品の破壊です。

部品が壊れていれば見ただけでわかることもありますし、最悪でも外してテスターで当たればわかります。

そうすれば、その部品の周りに保護部品と追加するとか、なにか道が見えてきます。

 

一番やっかいなのが、「静電気をかけるとなんか異常動作する」という場合です。

異常動作がOKな基準なら良いですが、「その異常動作はなんとしても受け入れられない」となると大変です。

「なんか異常動作」ということは、部品が壊れているわけではありません。

ということは、静電気試験を終えた後にくまなく調べてもどこでなにが起こったかを調べる手がかりがまったくないのです。

これでは正直手のうちようがありません。

 

そこで、そんなときにおすすめしたいのが、「静電気の経路の可視化」です。

といっても難しくありません。

静電気を試験する時に部屋を暗くするだけです。

電圧の低い気中放電だと厳しいですが、そこそこの電圧の接触放電ならほぼ確実に静電気の光が見えます。

例えばネジに静電気を打つと誤動作するとしましょう。

その場合は、ネジに静電気を打ちながら、部屋を暗くして製品をあちらこちらの方向からよーく見ます。

それでも見えない場合は、ネジだけ残して蓋を外す必要があるかもしれません。

蓋を外すことで経路が多少変わるかもしれませんが、それでもやって見る価値があります。

そうすると、「ネジから基板のどこに飛んでいるか」が見えてきます。

そしてさらに運が良ければ「基板のどこから外に逃げているか」も見えてきます。

 

是非ともチャレンジしてみてください。

 

以上、小田切でした。

基板のネジ穴の設計には気をつけて!

基板のネジ穴についてちょっと書きます。

 

ネジ穴、といっても基板にネジを切るわけではないので、基板に開けるのはただの穴(スルーホール)になります。

しかし、この穴を開ける際に注意する点が結構あります。

 

1,ネジの直径から0.2mm以上余裕を取る

例えば3mmの太さのM3のネジなら3.2mm以上の径を取るのが普通です。

3mmぴったりでは誤差が会ったばあいに入りませんからね。

 

2,穴から基板の縁まで1.6mm以上開ける

基板の端に穴を開ける場合、あまりぎりぎりまで寄せてはいけません。

基板が細くなりすぎるとそこが欠けてしまいます。

通常、基板の縁と穴の間には1.6mm以上のスペースを開けます。

 

3,ネジ頭orワッシャーの直径+ずれ+誤差の空きスペース取る

ネジが通るということは、ワッシャーかネジの頭が基板の上に載るわけです。

ということは、その直径の中に部品やパターンが有ると壊してしまいます。

気をつけないといけないのは、穴が少しゆるく作っているので、上下左右にネジはずれます。

なので、φ5のネジ頭であっても、ズレを考慮するとφ5.1は必要です。

さらに誤差を考えるとφ5.2は必要です。

本当はもっと欲しいですが、上記は最低ラインです。

 

4,「3」の空きスペースはパターンを完全になくすか、銅箔むき出しにして金メッキする

ネジやワッシャーでぐりぐりやったらレジストがはげてしまいます。

なので、このスペースには一切パターンがないのが理想です。

しかし、それができない、あるいはネジを通してGNDを外と接続したいという場合があります。

その場合、GNDベタを置いてレジストをかけないで銅箔むき出しにします。

しかし、銅箔は錆びるので金メッキをするのが適切です。

 

5,裏面も同じことをする

うっかり忘れそうになりますが、基板の裏側にも筐体の受けなどがあたりますので、同じことを考える必要があります。

 

このように、意外とネジは面倒です。

 

以上、小田切でした。

その測定器、「校正」できてますか?

回路設計では様々な測定器を使います。

・テスター

・安定化電源

・オシロスコープ

・スペクトラムアナライザー

・信号発生器

etc

 

会社ごとに機材の充実度は違えど、テスターやオシロスコープは必ずあると思います。

ですが、それ……「校正」出してます?

 

なんとなく「測定器」というと「精度が良くて絶対的なもの」と思ってしまいますが、そうではありません。

所詮ただの電子機器ですので、ズレもあれば経年劣化もあります。

つまり、そんなに信用できるものではないのです。

 

なので、測定器というのは本来、1年ないし2年ごとに「校正」ということをしないといけないのです。

これは、基準器(めちゃくちゃ高精度で厳格に管理されている機材)と照らし合わせて、値のズレがないか確認する作業です。

テスターであれば、電圧・抵抗値などですね。

 

通販サイトで適当に買ってきたテスターを校正せずにずっと使っている……

アマチュアならいいですが、仕事で使うのはアウトです。

3.3Vだと思ったら本当は3.4Vかもしれません。

そんな状態では正しいデバッグができません。

 

また、出荷する製品の検査で校正されていない測定器を使うとそれだけでアウトです。

最低でも出荷する製品の検査で使用する測定器は校正しましょう。

 

校正は構成を実施している試験機関は依頼することになります。

 

以上、小田切でした。

CPUの下にはGNDを!

アートワークで配線をすると、ついついCPUの下に配線を走らせてしまいますが、それはよくありません。

なぜでしょうか。

 

CPUの中は高速の信号が飛び交っており、CPU自体がノイズをばらまく原因です。

ノイズを吸収するのはGNDベタですので、CPUの直下に置くことでノイズを吸収させるのです。

つまり、ノイズを出来るだけばらまかないために直下にGNDベタが必要なのです。

これが一点。

 

さらに、ノイズに一番近いCPU直下に配線を置くとその配線にノイズが乗りやすいのです。

つまり、CPU直下の配線の信号品質に問題が出やすいから。

これが二点。

 

さらに、CPUの周囲にはパスコンがあったりプルダウン抵抗があったりして、周辺の配線には安定したGNDが必要です。

なので、CPUの下でぶった切れているようなGNDベタはよろしくありません。

これがで3点。

 

このように、複数の理由がありますので、よーく気をつけましょう。

 

以上、小田切でした。

意外と考えないといけないLEDの配線

アートワーク(基板設計)で配線を引く時、リセット信号や高速信号線には注意します。

リセット信号はできるだけGNDガードし、それが無理でも高速信号とは並走しないようにします。

高速信号はも同じように可能な限りGNDガードします。

 

そんな中、遅い信号はほとんど考慮しません。

遅い信号とは、スイッチ・ENABLE信号・LEDなどです。

こういうものは時々しか動かず、ほとんどHかLに固定されています。

遅いのでほとんどノイズをまかないのです。

 

が、今回ちょっと問題になってきたのは、LEDがPWM駆動しているという点です。

普通のLEDはON/OFFだけですが、PWM駆動となると下手すると1MHz近い速度で駆動します。

(普通はもっと遅いと思いますが・・・)

そうなると、ノイズをまくようになり、リセット信号と並走するのはちょっとまずくなってきます。

 

当初、LEDはOn/Offだけの予定だったので気にしてなかったのが、PWMになり配線に苦労……というパターンです。

 

ということで、普通は見逃しがちなLED配線ですが、PWM駆動の場合もありますのでご注意を。

 

以上、小田切でした。

ハードウェアのデバッグはソフトウェアが必要!

電子回路ののった基板を開発したら、まずハードウェア開発者がデバッグという動作検証を行います。

そして、問題なければソフトウェアの開発者の手に渡って開発が進みます。

 

……が、実際はそう簡単に行かないのです。

 

電源などはハードウェア開発者だけで確認ができます。

CPUにつながっているLEDの制御も、CPU用の開発環境からGPIOの制御ができればハードウェア開発者だけでもまぁ、みれないことはないです。(めんどいけど)

 

しかし、通信となるとお手上げです。

たとえば、UART通信。

SPI通信

I2C通信

etc

 

これらはCPUないのソフトウェアが出来ていないと動きません。

この通信バスにつながっているEEPROMなどもCPUからの通信がなければうんともすんともいいません。

つまり、動作確認が全く出来ないのです。

 

・ピン設定が間違っているかもしれない

・波形の品質が悪いかもしれない

 

そういったことは、通信ができる状態にならないと確認もできないのです。

 

ということで、結局の所、ソフトウェア開発者とハードウェア開発者の間で基板をやりとりしながら進めないといけません。

一箇所にいればまだいいですが、それぞれ違う場所にいるとまぁ大変。

 

と、こんなことであります。

 

以上、小田切でした。

軽負荷時に効率がいいDCDCコンバータの選び方

電池駆動の製品でDCDCコンバータを使うとなると、効率が非常に大事になってきます。

それだけでも結構難しい問題ですが、「スタンバイ時間が長い」となるとさらに難しくなります。

 

電池駆動製品の場合、スタンバイのときは数十uA程度の電力で待機することになると思います。

スタンバイ時に1mAも消費していたら、スタンバイだけですぐに電池が終わってしまいます。

 

しかし、「大電力の時に効率がいい」設計をすれば低負荷のときにも効率がいいとは限りません。

軽負荷時に消費電力を下げるにはいくつかの工夫が必要です。

 

・消費電流が小さいDCDCコントローラを選ぶ

当たり前ですが、大事です。

DCDCコンバータのコントローラICでは数mA以上の消費電流が流れるものも多く、そんなものを選んでしまったらどうにもなりません。

 

・場合によってはFET外付けを選択する

最近のDCDCコントローラICはほとんどFET内蔵です。

しかし、FET外付けタイプではさらに消費電流が低いタイプがあったりします。

そういうときは、めんどうではありますが、FET外付けタイプを選択するのも手です。

 

・発振周波数が低いものを選ぶ

FETのON/OFFが切り替わる瞬間、つまりFETが半分ONになっているような瞬間があります。

そのときにはFETの抵抗が高い状態であり、電力がFETで消費されてしまいます。

また、FETのゲートを駆動するためにも電力が消費されます。

このような理由から、FETのON/OFFが変化する回数は低いほうが効率が良くなります。

つまり、発振周波数が低いほうが効率がよくなります。

その代わりに、大きいコイル・コンデンサが必要になってしまいますので、トレードオフで判断しましょう。

 

以上、小田切でした。

日本国内の電波の割り振り状況を知りたい時

無線機器などの設計に関わると、

 

「日本国内の電波ってどういう割り振りになっているんだ?」

 

と疑問に思うことがよく有ります。

 

実際の設計では、「900MHz帯をつかいます!」とか「400MHz帯をつかいます!」とか決め打ちなので、日本国内のすべての電波の割り振り状態を知りたいということはあんまないんですけどね。

それでも、予備知識として見ておきたいということがあります。

 

そんなときは、総務省のWEBサイトをみればいい!

 

我ながらなんてひねりのない回答でしょうか。

 

総務省 周波数割当て

http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/

 

見てみると分かるのですが、すべてぎっちりです。

隙間がありません。

隙間があるところはすべてアマチュア無線などに割当されるでしょうから、当たり前といえば当たり前で

す。

電波については下から上まで使い尽くされていることがよくわかります。

 

そして、すごく細切れです。

もっとざっくり区切ってあればいいのですが、すごく細かい刻みで用途が分かれています。

これではEUと電波周波数を合わせようと思っても無理なわけです。

これだけ細分化して用途が振られていれば、ずらそうにもずらすことができません。

 

この割当を見て仕事に活かすということはすくないかもしれませんが、いざという時のために頭の隅においておくといいと思います。

いつでも総務省のWEBでみることができます。

 

以上、小田切でした。

CPUのクロックにはどれだけの精度が必要なのか

CPUのクロックについて考えていると、

 

「CPUには内蔵発振器が入っていて精度が1-3%、水晶振動子を外につければ20ppm(0.002%)。もちろん、水晶振動子を使うほうが良いのは分かる。じゃあ、内蔵発振器でもいいのはどういうとき?」

 

という疑問にぶち当たります。

水晶振動子を使うのならまず問題ありませんが、内蔵発振器が入っているので可能ならそちらで済ませたいものです。

「誤差が大きくてダメだ!」

ということは簡単ですが、どの程度までの誤差が許されるのかきちんと認識していることは少ないのではないでしょうか。

 

◯精度を全く気にしなくていい場合

もし、その製品がスイッチを監視していて、スイッチが押されたらモータを回すだけというような……要は簡単な電子工作みたいなものだったら精度はまったく不要です。

なぜならここに時間的要素が一切ないからです。

(もし、モータを回す時間に1%のずれも許されないようであれば、駄目ですが)

 

基本的に、「何かを時間的にきっちり正確に動かす必要がなく、他のデバイスと非同期通信をしない」というのであればクロックの精度は不要になります。

 

 

◯精度は必要だが内蔵発振器でもいける可能性がある時

スイッチが押されたらモータを回す、という程度の機能であっても、他のデバイスと通信するとなるととたんに時間が大事になってきます。

SPIやI2Cのようなクロック信号がある同期信号では、お互いにクロックで同期をとるのでメインクロックのずれなど問題になりません。

しかし、UARTのようなクロック信号がない非同期信号では、一定の時間ごとにデータを送るので、メインクロックがずれているとデータを送るタイミング・受けるタイミングがずれて、ビットがずれたデータを送受信してしまいます。

そうすると、通信が確立しません。

 

なお、UARTでは2~3%のクロックのズレならば問題なく通信できる可能性が高いです。

しかし、送信と受信の両方で2%ずれたら合わせて最大4%ずれてしまいます。

片方が水晶振動子駆動で精度がよいという条件か、互いにズレが1%程度という条件でないと厳しくなります。

 

◯精度が必要すぎて水晶振動子が必須な場合

まず、時計です。

外付けのRTCなどを使用せずに、CPUが自分で時刻をカウントするという時点で水晶振動子は必須になります。

1%のずれがあったら、一日に14分もずれてしまうのでまったく実用になりません。

 

つぎに、無線内蔵CPUです。

無線通信(RF)では法律により、厳しく周波数の範囲を決められています。

たいてい50ppm程度しかずれてはいけません。

この時点で水晶振動子が必須です。

 

 

というようなところで、なんとなく感覚つかめたでしょうか。

 

以上、小田切でした。

LDOの最大出力電流は信じてはいけない

LDOのデータシートを見ると「最大出力電流:1A」などと書いてあると思います。

ですが、これは信じていはいけません。

 

なぜでしょうか。

 

最大出力電流1Aというのは、

・電流制限機能が1A以上になっている(1Aまでは電流制限が効かない)

・電流を制御している素子が1A以上耐える

といっているだけです。

 

「え、1Aに耐える素子が入っていて、電流制限も聞かないんでしょ? じゃあOKじゃん」

 

と思うかもしれませんが、これが間違い。

一つ忘れている項目があります。

それは

 

 

です。

 

「1A流したときの熱に耐えられるか?」はこの項目に入っていないのです。

この判断には「許容損失」という項目を見る必要があります。

 

例えば、このLDOの許容損失が基板実装時に2Wだとします。

 

5Vから3.3V 1Aを作る場合では、

LDOの損失=(5-3.3)x1=1.7W

ですから、許容損失以下でOKです。

 

12Vから3.3V 1Aを作る場合では、

LDOの損失=(12-3.3)x1=8.7W

ですから、許容損失を大きく超えてしまいNGです。

 

このように、入力電圧によってLDOの損失=熱が変わってしまい、許容損失以内かそうでないかがかわってしまうのです。

 

ということで、データシートの電流表記を見るだけでなく、許容損失で実際にどれだけの電流が流せるか確認するようにしましょう。

 

以上、小田切でした。