電源

見落としがちな電源立ち上がり順序

大規模なSoCなどになると、電源を複数持っています。

例えば、コアに1.2V、メモリ用に1.8V、外部I/O用に3.3V・・・と3つぐらいの電源があるのは当たり前です。

こうなってくると面倒なのは、電源を用意すればいいだけではなく順番も重要になることです。

 

例えば、SoCのデータシートが

「1.2V、1.8V、3.3Vの順番に電源を入れてください」

と記載してあるとします。

(大体低い電圧から入れるのが普通です)

 

しかし、普通に電源回路を作るとどうなるでしょうか。

3.3V生成→3.3Vから1.8Vを生成→3.3Vから1.2Vを生成

みたいな構成になることが多いと思います。

すると、電源が入る順番は

「3.3V→1.8V→1.2V」または「3.3V→1.2V→1,8V」になってしまいます。

つまり、電源回路を普通に作って供給すると、高い電圧から供給されてしまうのです。

 

非常に面倒な点です。

 

解決策の一つは、そのSoC専用に設計された電源ICがあればそれを利用することです。

そういうものがあればそれを利用するのもいいでしょう。

もう一つは、電源を制御するための回路を組み込む方法です。

上記の電源回路であれば、1.8Vと3.3Vの電源ラインにFETを入れておき、電流を遮断します。

そして、1.2Vの電圧が入ったら1.8VのFETをON、1.8Vの電圧が入ったら3.3VのFETをONにする回路を入れるのです。

 

初めてやると結構面倒な部分です。

 

ということで、複数電源があるICの電源投入順序は十分に気をつけましょう。

 

以上、小田切でした。

レギュレータのパッケージってどう選ぶ?(初心者向け)

レギュレータのデータシートを見ていると、一つの品種で5個も6個もパッケージが合ったりします。

さて、どれを選べばいいでしょう。

 

大きいのを選ぶ?小さいのを選ぶ?

そもそもなんでいくつもあるわけ?

 

正解は

「実装能力の限界と発熱量で選ぶ」

です。

 

小さい基板にたくさんの部品を詰め込まないといけない場合は、とにかく小さい部品を使いたいわけです。

ですから、基本的に一番小さい部品を選びます。

しかし、あまりに小さいと基板に部品を載せる工場から「そこまで小さいと無理!><」と言われます。

そこで工場が「これなら大丈夫」と言ってくれる一番小さいサイズの部品を選びます。

 

次に、発熱量です。

部品によりますが、「許容損失」または「熱抵抗」が定義されています。

面倒なので今回省きますが、要はどの程度の発熱量に耐えられるかということです。

この値は「部品のサイズ」と「部品と基板の結合度合い」で決まります。

部品が大きいほど大きな発熱に耐えられますので、発熱量を計算してそれに耐えられる大きさのパッケージを選びます。

 

こうしてパッケージが決まるわけです。

 

以上、小田切でした。

レギュレータの入出力間電位差とは?(初心者向け)

3端子レギュレータでももっと足が多いレギュレータでも、知識がない方が使おうとすると悩むことが色々あるんじゃないでしょうか。

 

「3.3V がほしいんだ」

→3.3Vのレギュレータを探します

 

「電流はちょっとしか使わないから100mAもあればいいや」

→3.3V出力で100mA以上出力できるものを探します

※本当はここで熱抵抗とか考えないといけないのですが、初心者向けなので省略。

 

「よし、この部品を使おう。ネットで1個ずつ買えるし」

と、こうなるのですが、使おうとした時に困りませんか?

 

「あれ、一体電圧いくつ入れれば良いんだろう?」

 

そうです。

最大電圧は規定されていますが、最小電圧はいくつなんでしょう?

こういう時データシートを見てもたいてい「最小電圧」みたいな書き方はされていません。

「入出力間電位差」という書き方をされています。

 

◯入出力間電位差

これは入力と出力の間に必要な電圧のことです。

例えば入出力間電位差が2Vであれば、

3.3Vを出力するのに5.3V以上の入力が必要です。

(5Vを入れると3Vしかでません)

 

ちなみにこの入出力間電位差は部品によって全然違います。

(中の構造が違うので)

入出力間電位差が2Vを超えるものから0.1V程度のものまで幅広いです。

基本的に耐圧が高いものほど入出力間電位差が大きくなってしまいます。(トレードオフです)

この入出力間電位差が1V以下のような小さいものを「LDO(Low Drop Out)」といいます。

なので、選べるのであればLDOなレギュレータを使いたいです。

LDOを使えば5Vから3.3Vを作るのは簡単ですが、2V以上の電位差が必要なレギュレータでは5Vから3.3Vを作ることが出来ません。

 

また、入出力間電位差は「電流」と「温度」で変わります。

(データシートの表紙に書いてあるのは代表値でしか無いので、それだけで判断してはいけません)

レギュレータのデータシートのグラフを一つ一つ見ていくと、どこかに「温度vs入出力間電位差」「電流vs入出力間電位差」のグラフがあるはずです。

面倒ですが、ちゃんと見たほうが良いですよ。

 

以上、小田切でした。

DCDCコンバータとLDO、どちらが効率がいい?

DCDCコンバータは電力損失が少なく、LDO・レギュレータは電力損失が多い。

一般的にはそうなります。

例えば、15Vから5V/1Aを作る場合を考えましょう。

 

◯DCDCコンバータ

5V/1Vは電力では5Wです。

DCDCコンバータの効率が80%だとすると、6.25Wの電力を入力する必要があります。

6.25/15=0.4166

15V/0.4166Aの入力が必要です。

 

◯LDO・レギュレータ

入力電流=出力電流

なので、入力は15V/1Vになります。

 

このように入力電流が倍以上必要になってしまいます。

こうなると完全にDCDCコンバータが有利です。

 

が、例外があります。

それは電圧差が小さくて電流がすごく小さい場合です。

 

品種にもよりますが、DCDCコンバータはそれ自体が数mA消費します。

ここでは仮に3mAとします。

LDO・レギュレータも品種で全然違いますが、本来の消費電流が数uAのものも結構あります。

ここでは仮に10uAだとしましょう。

 

さらに5Vから3.3Vを作るとして、その3.3Vは30uAしか消費していません。

そうすると・・・

 

◯DCDCコンバータ

出力は3.3V/30uAなので99uW必要です。

効率を80%とすると、約124uWの電力が必要です。

124u/5=24.8u

ということで、入力は5V/24.8uAとなります。

が、ここにさきほどは無視していたDCDCコンバータの消費電流が乗ります。

結局、5V/3024.8uAです。

 

◯LDO・レギュレータ

入力は5V/30uAです。

そこにLDO自体の消費電流が乗ります。

5V/40uA

 

どうでしょうか。

DCDCコンバータ自体の消費電流が大きいせいで、変換効率が良くても結局電流が大きくなってしまっています。

 

ということで、「電流が少ない時(10mA以下)」のときはDCDCコンバータよりLDOの方がいい場合がありますので、効率を考えるときには気をつけましょう。

 

以上、小田切でした。

なぜ電源を作る必要があるのか?(初心者向け)

そもそも話です。

3端子レギュレータ・LDO・DCDCコンバータ・はてはチャージポンプなど、電源を作る方法は色々あります。

でも、こう思いませんか?

 

「5Vが必要なら5Vを作る回路なんて作らないで最初から5Vを入れればいいのに」

 

実はこれは正しいのです。

例えばUSB給電で動く機器がありますよね。

USBは5V(4.5-5.25V)ですので、その電圧で動く機器であれば電源をわざわざ作る必要はありません。

 

が、問題は今は部品によって動作電圧がぜんぜん違うんです。

昔は、「全部の部品が5V」みたいな時代も合ったのですが、

今は「CPUのコアは1.8V、通信は3.3V、モータ制御は5V」のように部位ごとに電圧が違うのが普通です。

なんででしょうか。

 

電圧が高いほどエネルギーがあるので、モータを動かしたり、長い配線の通信をしたりするには向いているのです。

ですが、高速動作させると大量のエネルギーを使う上、電圧の動作幅が大きくて高速動作に向いていないのです。

ということで、高速動作させるCPUなどは必然的に1.2Vや1.8Vなどの低電圧になります。

 

ということで、必然的に複数の電圧が必要になり、それぞれの電源を生成する必要があるのです。

今でも低速回路では「全部5V」あるいは「全部3.3V」の場合がありますので、そういう場合は外からその電圧を入れてしまえば基板の中で電源を作る必要はありません。

 

以上、小田切でした。