電気の基礎

その測定器、「校正」できてますか?

回路設計では様々な測定器を使います。

・テスター

・安定化電源

・オシロスコープ

・スペクトラムアナライザー

・信号発生器

etc

 

会社ごとに機材の充実度は違えど、テスターやオシロスコープは必ずあると思います。

ですが、それ……「校正」出してます?

 

なんとなく「測定器」というと「精度が良くて絶対的なもの」と思ってしまいますが、そうではありません。

所詮ただの電子機器ですので、ズレもあれば経年劣化もあります。

つまり、そんなに信用できるものではないのです。

 

なので、測定器というのは本来、1年ないし2年ごとに「校正」ということをしないといけないのです。

これは、基準器(めちゃくちゃ高精度で厳格に管理されている機材)と照らし合わせて、値のズレがないか確認する作業です。

テスターであれば、電圧・抵抗値などですね。

 

通販サイトで適当に買ってきたテスターを校正せずにずっと使っている……

アマチュアならいいですが、仕事で使うのはアウトです。

3.3Vだと思ったら本当は3.4Vかもしれません。

そんな状態では正しいデバッグができません。

 

また、出荷する製品の検査で校正されていない測定器を使うとそれだけでアウトです。

最低でも出荷する製品の検査で使用する測定器は校正しましょう。

 

校正は構成を実施している試験機関は依頼することになります。

 

以上、小田切でした。

電源入れたままケーブルの抜き差ししちゃだめ!

今はUSBやSDカードなど、電源を入れたまま抜き差しできるデジタルなものがたくさんあります。

だからなんとなく、どんなものでも電源を入れたままケーブルを抜き差しする人が居ます。

 

設計者として言わせてもらうと、絶対に止めてくれ!!!

 

電源を入れたまま抜き差しすることを「活線挿抜(かっせんそうばつ)」といいます。

 

ケーブルの抜き差しの際にはケーブルのインダクタ成分による起電力が発生します。

要は抜き差しの瞬間に変な高電圧が発生するんです。

 

そして、端子が繋がる順番が超大事です。

GNDからつながればなんということはありませんが、電源と信号線だけが繋がるとこれは大変!

普通は、電源→GNDとながれる電流が、電源→信号線と流れるので、信号線に大電流が流れてICが破損することもあります。

 

ということで、活線挿抜に対応するには

 

1,GNDが最初に接続されるコネクタであること

(SDやUSBはそういう設計になっています。普通のコネクタはそうではない)

2,高電圧(サージ)対策部品がついていること

 

の二つが必須です。

 

基本的にはコネクタは電源OFFのときにしか抜き差ししては駄目。

そして、活線挿抜対応するにはコネクタから見直しが必要ということです。

 

以上、小田切でした。

ICの「5Vトレラント」とは?

ロジックICやCPUで「入力は5Vトレラントです」という記述にぶつかることが有ります。

これはなんでしょうか。

 

例えば、3.3Vで動いているロジックICの入力電圧は普通最大3.3Vです。

1.8Vで動いていれば入力電圧は1.8Vまでです。

(正確には絶対最大定格で電源電圧+0.3Vぐらいは許容されていますが)

このように、普通のICの入力電圧は電源電圧と同等です。

もし電源電圧以上の電圧を入力端子に入力すると、電流が電源に戻っていってしまいます。

つまり、3.3V電源のICの入力端子に5Vを入れると、3.3V電源に電流が流れて3.3V→約5Vまで上がってしまうわけです。

そもそも部品が壊れます。

 

ということで、3.3Vで動いているIC・CPUに5Vやそれ以上の電圧の信号を入れる場合、電圧レベルを変換する回路(レベルシフトICやトランジスタで組むなど)が必要になります。

でも、やっぱり面倒なんです。

 

ということで「5Vトレラント」というのは、「電源電圧に関わらず入力端子に5Vまで入れてOK」という設計だということです。

これは嬉しいです。

例えば、3.3Vや1.8Vといった低電圧で動いていても5Vを入れられるので、回路が非常にシンプルになります。

こんな便利な5Vトレラントですが、結構レアです。

もし使おうとしている部品が5Vトレラントだったらラッキーと思ってください。

 

以上、小田切でした。

基板開発でよく使う測定機器

そういえば、測定機器について紹介していなかったので、軽く列挙してみようと思います。

 

◯テスター

ご存知のテスター。

電圧を測ったり抵抗値を測ったり、安くてもマルチに活躍する大事な商売道具です。

 

◯LCRメーター

コンデンサの容量やインダクタの値を測定することができる機器です。

テスターの高機能版。

 

◯安定化電源

自由に電圧・電流を設定して出力ができる電源です。

「この基板の入力電圧は5V±5%だ」というときに、4.75Vと5.25Vでテストをしないといけませんが、安定化電源ならそういった中途半端な電圧も出力できます。

 

◯オシロスコープ

信号の波形を見ることができる機材です。(横軸時間、縦軸電圧)

DCDCコンバータの出力波形や通信の信号波形をみるのに使います。

帯域100MHz程度のものなら数万円でもあるほど安いですが、それ以上の周波数になるといきなりお値段上がります。

 

◯スペクトラムアナライザー

信号の周波数分布を見ることができる機材です。(横軸周波数、縦軸パワー)

無線出力など数百MHz~数GHzなのでオシロスコープでは捉えられないので、スペクトラムアナライザーで確認します。

百万円以上するのが普通です。

 

◯シグナルジェネレータ

任意の波形を出力することができる機器です。

スペクトラムアナライザーとセットで使うことが多いです。

 

◯ネットワークアナライザー

アンテナやアンテナのマッチング回路でよく使用する機材です。

「この回路に100MHzの信号を入れた時、外から(x+yj)Ωに見えるか」といった回路の実際の複素インピーダンスを測ることができます。

百万とか一千万レベルの機材です。

 

◯恒温槽

指定した温度・湿度を保ってくれる冷蔵庫みたいな装置です。

高温・低温で動作試験をする際に使用します。

 

◯静電気試験機

静電気を出すガンで、製品に静電気を打って耐性を調べる時に使います。

 

メジャーなところだとこんなところでしょうか。

気になるものがあったらぐぐってみると知識が広がりますよー。

 

以上、小田切でした。

鉛フリーはんだって?(初心者向け)

もともと普通の「はんだ」には鉛が含まれています。

この「鉛ハンダ」は、溶けやすいしハンダしやすくて大変結構なものなのですが、環境保全の観点で「鉛」が問題になりました。

そのまま捨てられると鉛が土に染み込んでしまい、環境汚染の元になるからです。

 

ということで、鉛を含まない「鉛フリーはんだ」というものが生まれました。

今ではほとんどの製品では「鉛フリーはんだ」を使用していて、従来の「鉛ハンダ」を使用することなどほとんどありません。

(経験上、見たことありません)

電子部品も大抵「鉛フリー対応」と書かれています。

 

ところが、鉛フリーはんだは、扱いにくいんです。

融点が高いので、鉛ハンダより溶けにくく、鉛ハンダより高出力のこてが必要になります。

(実際やってみると「なんだこのハンダ。全然溶けないぞ」って感じます)

さらに濡れ性が悪くて、いい感じにするするっと流れてくれません。

鉛ハンダで綺麗にハンダできていた感覚で扱っても、なかなか綺麗にハンダできません。

 

ということで、業務で扱うなら鉛フリーを使う以外に手はないのですが、アマチュアで扱うなら正直従来の「鉛ハンダ」のほうが圧倒的に扱いやすいです。

もし、鉛フリーはんだで苦しんでいたら、鉛ハンダを買って試してみるのも手です。

 

以上、小田切でした。

部品の型番はどう書くかは生産部(or外注工場)しだい

回路設計をする時に当然部品を選びます。

そして、回路図と一緒に「部品表」という物を作ります。

部品表には「なんという部品」を「何個」使うということをリスト上で書いていきます。

実際には大抵エクセルファイルです。

 

しかし、部品にはいろいろな表記があります。

例えば、抵抗を「100Ω/1005」と書いてもいいですし、「KOA RK73B1ETTD101J」と全部指定することも出来ます。

 

どちらが正しいかというと、生産部や工場次第です。

たとえば、「生産部・工場ですでにラインナップしている抵抗を使うからサイズと抵抗値だけ指定してくれれば勝手に選ぶよ」という事があります。

その場合は型番を書くと逆に迷惑になりますので、「100Ω/1005」と書いたほうがいいです。

逆に「部品を新たに買うor自分で型番いれる労力をかけられないから、全部そちらで一言一句間違いなく入れてくれ」という場合もあります。

 

また、部品は紙テープなどに貼り付けられた状態で納入されるのですが、それもバリエーションが有るのです。

どういう幅の紙テープか。

どの間隔で部品があるか。

実装マシンの受け入れられる形状の紙テープ仕様にしないといけませんが、ハッキリ言って回路設計者はそこまで知りません。

「部品型番は入れるけど、テープ仕様はどれが良いかわからないからそっちでなんとか選んでくれ!」となるのが普通です。

 

以上、小田切でした。

レギュレータのパッケージってどう選ぶ?(初心者向け)

レギュレータのデータシートを見ていると、一つの品種で5個も6個もパッケージが合ったりします。

さて、どれを選べばいいでしょう。

 

大きいのを選ぶ?小さいのを選ぶ?

そもそもなんでいくつもあるわけ?

 

正解は

「実装能力の限界と発熱量で選ぶ」

です。

 

小さい基板にたくさんの部品を詰め込まないといけない場合は、とにかく小さい部品を使いたいわけです。

ですから、基本的に一番小さい部品を選びます。

しかし、あまりに小さいと基板に部品を載せる工場から「そこまで小さいと無理!><」と言われます。

そこで工場が「これなら大丈夫」と言ってくれる一番小さいサイズの部品を選びます。

 

次に、発熱量です。

部品によりますが、「許容損失」または「熱抵抗」が定義されています。

面倒なので今回省きますが、要はどの程度の発熱量に耐えられるかということです。

この値は「部品のサイズ」と「部品と基板の結合度合い」で決まります。

部品が大きいほど大きな発熱に耐えられますので、発熱量を計算してそれに耐えられる大きさのパッケージを選びます。

 

こうしてパッケージが決まるわけです。

 

以上、小田切でした。

部品のパッケージ DIPとSMD(初心者向け)

電子部品には「DIP」と「SMD」があります。

DIPというのは、基板に差し込む前提の部品のことです。

趣味で使うような部品、ユニバーサル基板などに刺す部品です。

3端子のトランジスタが代表例です。

※コメント欄で三端子部品はDIPとは呼ばないという指摘がありました。

(ただ、実際には工場も設計も差し込む部品は全部「DIP」で通じる)

SMDは「表面実装部品」のことです。

この部品は基板に穴を開けず、基板の上に載せてハンダで固定します。

例はなんでも良いのですが、例えばこんな部品です。

http://www.rohm.co.jp/web/japan/products/-/product/DTC043EUB

実際の業務でどっちを使うか、と言われると……

実は両方使います。

手で扱うにはDIPの方が圧倒的に楽ですが、その分大きくなってしまいます。

そして、基板に穴を開ける関係で、両面に部品を載せるということが出来ません。

その点、SMDは手で扱うのは面倒ですが、小さいです。

そして、基板に穴を開けないので、両面に部品を載せることが出来ます。

ということで、小さく基板を作る場合にはSMD品を使います。

というか、最近はほとんどの部品がSMD品しかありませんので、必然的にSMD品を使うことになります。

じゃあどういうときにDIPが使われるかというと、「大きな力がかかる部品」です。

例えば、LANのコネクタです。

結構力入れて抜き差ししますよね?

SMDというのはハンダで固定されているだけなので、力をかけると取れてしまいます。

その点、DIPは基板に穴を開けて固定されているわけなので、とても頑丈です。

ということで、LANコネクタはDIPになります。

以上、小田切でした。

電気を水に例えるとわかりやすい(初心者向け)

電気というのはとかくイメージしにくいものです。

 

「電圧」「電流」とか言葉はあるけど、イメージできない。

式とか定義とかどうでもいいから、とにかくわかりやすく教えて!

 

そんなあなたに「電気=水」の概念をおすすめします!

 

水と電気の相違点

水というのは上から下に流れます。

電気も同じです。高いところから低いところに流れます。

水の流れには勢いがあります。

電気にも勢いがあります。

水には「量」があります。

電気にも「量」があります。

電気というのは「電子」の塊ですが、「電子=水の粒」と考えてイメージするとすごくわかりやすいです。

 

電圧=水が落ちる高さ

電気の電圧というのは「水が落ちる高さ」に相当します。

高いところから水を落とせば勢いが強く(水圧が高い)、低いところから水を落としても勢いは弱いです(水圧が低い)。

電圧というのも同じです。

電圧が高ければ電気の勢いが強く、電圧が低ければ電気の勢いは低いです。

 

電流=流れる水の量

同じ高さから水が落ちる場合でも、ちょろちょろ流れるのとたくさん流れるのでは違いますよね?

電気も同じです。

流れる量を「電流」といいます。

電流が大きければ、電気(電子の粒)が一気に流れるイメージ、電流が小さければ、ちょろちょろ流れるイメージです。

 

エネルギ=水が落ちる高さ×流れる水の量=電圧×電流

ここでエネルギーを考えてみましょう。

イメージが付きやすいように、「かわいそうな人に水を上からぶちまける」という例で考えましょう。

痛いけど、わかりやすいので(汗;

エネルギーというのはこの人が感じる痛みと同じです。

 

バケツいっぱいの水を頭の上10cmから落とす場合と、頭の上10mから落とす場合、どちらが痛いでしょうか?

10mの方が痛いですよね。

つまり高いところから落とすほうがエネルギーが大きいのです。

電気も同じで、電圧が高いほどエネルギーが大きいのです。

 

バケツの位置を頭の上1mに固定したとして、小さいバケツと大きいバケツを使うとどちらが痛いでしょう?

大きいバケツでたくさんの水をぶつけるほうが痛いですよね。

電気も同じで、電流が大きいほどエネルギーが大きいのです。

 

このように、エネルギーには電圧と電流の両方関係していて、

 

電力P=電圧V×電流I

 

という式で表されます。

 

なんとなくですが、電圧と電流のイメージが掴めましたか?

 

以上、小田切でした!

オームの法則 電圧V=電流I×抵抗R (初心者向け)

オームの法則って何?

電圧と電流と抵抗値の関係を表した法則です。

それだけ聞いてもピンとこないと思いますが、実際に電気回路を設計するときには多用します。

 

オームの法則の回路図

image

 

オームの法則はV=IRで表されます。

ある抵抗R[Ω]に電流I[A]が流れた時に抵抗の両端に電圧V[V]の電位差が発生する」ということです。

この1行が滅茶苦茶大事です。

この1行が理解できれば、オームの法則を縦横無尽に活用できます。

 

電流を計算したい時

上の回路図では抵抗R1の抵抗値は100Ωです。

この抵抗を1.5V電池に接続したとしましょう。

つまり、抵抗の両端の電位差は1.5Vです。

ということは・・・

V = IR

1.5[V] = I*100[Ω]

I = 1.5[V]/100[Ω] = 0.015[A](15mA)

という計算ができるので15mAの電流が流れるとわかります。

 

電圧を計算したい時

これは式通りです。

V=IRで計算できます。

ただ、普通の人が思うのは

「電流と抵抗値から電圧を計算したいときってどんなとき?」

ということです。

先程のように、抵抗に電圧をかけた時に電流を計算したいケースは想像がつくと思いますが、

「電流が分かっていて電圧がわからない」というケースは想像しにくいと思います。

これは例えば、配線抵抗の電圧降下を計算する時に使います。

 

例えば、1[A]の電流が流れる製品があるとして、電源からその製品の間に3mの配線があるとします。

その3mの配線の抵抗は測ってみると0.5[Ω]でした。

で、ここで注意してほしいのは、電源線はプラスとマイナスの2本があるので3mx2=6mの抵抗値を考えないといけません。

だから、配線全体の抵抗は1[Ω]です。

すると配線にオームの法則を適用すると……

V = IR = 1[A]x1[Ω] = 1[V]

なんと配線だけで1Vも電圧が落ちてしまいます。

つまり、電源が15[V]だったとしても、配線の先の製品には14[V]しか入っていかないということです。

 

抵抗を計算したい場合

抵抗を計算したい場合も式を変形するだけです。

R=V/I

です。

LEDの制限抵抗などを計算する時などに必要になります。

「抵抗の両端に3Vかかるときに、15mA流れるような抵抗の値はいくつだろう?」

と抵抗を選ぶ時に使用します。

 

以上、小田切でした!