2017年 12月 の投稿一覧

ダンピング抵抗とは?

ダンピング抵抗とは信号配線に入れる抵抗のことです。

たとえばICとICをつなぐ信号線、直接繋いでもいいのに、製品の回路を見ていると抵抗が入っていたりしませんか?

そういうのがダンピング抵抗です。

 

ダンピング抵抗の役割は大きく2つあります。

 

◯波形の成形

配線にはインダクタ成分があるので、電流が流れ続けようとすることにより、

オーバーシュートなどの意図しない電圧が発生します。

配線に抵抗成分があると電流が流れにくくなるのでオーバーシュートなどが小さくなります。

ということで、オーバーシュート・アンダーシュートを減らすためにダンピング抵抗を使います。

でも、大きくすると駆動力が小さくなるので今度は波形がなまります。

 

◯静電気・活線挿抜からの保護

コネクタからICに配線される場合にその配線にダンピング抵抗を入れます。

基本的に普通のコネクタは活線挿抜(電源入れたままの抜き差し)は禁止ですが、実際にはやられることがあります。

そのときにやはり配線のインダクタ成分により、大きな電圧が瞬間的に発生します。

その電圧から保護するために抵抗を入れているわけです。

また、静電気にもきも~ち効くかも?ということで入れてあります。

(静電気に対処するには当然ちゃんとした対策部品と組み合わせます)

 

ということで、ダンピング抵抗は非常に大事です。

ダンピング抵抗が全然入っていない回路図を自分が見ると「素人かよ」と毒舌を吐きますのでご注意下さい。

とはいえ、あまり大きな抵抗を入れると波形がなまりますので、加減が大事です。

だいたい10~100Ωくらいが普通です。

実際の波形を見て問題がないことを確認しましょう。

 

以上、小田切でした。

デバッグで波形の評価はどこまでやればいいのか?

デバッグで当然のことながら、オシロスコープで各部の波形を見ます。

そして見るからにおかしければ当然対処します。

それはまぁ、あんま問題ありません。

 

問題は、「パット見問題ない」時に「厳密に何を合格とするか」です。

 

波形の評価というのは、細かく見出したら本当にキリがありません。

 

1,Highの電圧

2,Lowの電圧

3,立ち上がり速度

4,立ち下がり速度

5,オーバーシュート

6,アンダーシュート

7,他の信号(クロックなど)との時間関係

8,USBやEthernetなどオシロスコープでまともに取れない信号に対して、専用試験機による波形評価

 

◯簡単評価

例えば、とにかく動けば良いもの(一台だけの間に合わせの品)なら「1-2」だけかもしれません。

ここだけは必須です。

もし、3.1V以上必要な相手に対してHighが2.9Vにしかなってなければ問題です。

 

◯基本評価

この場合、「1-6」まででしょうか。

立ち上がり速度やアンダーシュートまで見ます。

でもこれも微妙なんですよね。

I2Cなどは遅いので問題ありませんが、PUSHPULLで動いている波形はかなり速いので、プローブとの相性や接続方法でオーバーシュートやアンダーシュートが大きく変わります。

立ち上がり速度ぐらいは正確に測定できなくても「◯us以下」ぐらいいえますが、アンダーシュートやオーバーシュートは正確に測定するの難しいです。

本当はICの定格が「VCC+0.3V」であれば、オーバーシュートは0.3V以下でないといけないんですが、それやりだすと結構大変です。

(だって全部のダンピング抵抗を集合抵抗含めて付け替えるの?って話です)

オーバーシュートは「ごにょごにょ」なときもあります・・・

 

◯真面目に評価

この場合、「1-7」まででしょうか。

他の信号とのタイミングを見出すと本当に大変です。

例えばSD信号なら、「CLK」「CMD」「DATA0」「DATA1」「DATA2」「DATA3」の6つの信号の関係を全部見ることになるんです。

もちろんやるべきなんですが、実務的にはかなり大変・・・。

実際には(本当はいけませんが)スクリーンショットだけ取って「ほら問題ないでしょ?」と見た目だけで済ましてしまうこともあったりして・・・。

本当はすべての信号の間のタイミングを全部測定して規定以内か調べないといけません。

 

◯くそ真面目に評価

この場合「1-8」までやります。

もうここまで来ると、担当者の判断ではなく、お客さんが「こういう試験をやってくれ」と依頼してきた場合だけですね。

EthernetやUSBなどは専用の試験機などがあったりしますが、当然それなりな費用がかかります。

ここまでやると測定だけでおお仕事です。

 

とまぁ、こんなイメージでございます。

 

以上、小田切でした。

基板のデバッグ、まずやるのはショートチェック

回路を設計し、アートワークも終わり、部品実装も行い、部品が乗った完成基板が上がってきました。

さて、ここでなにから始めるでしょうか?

 

いきなり通電!

NG! 駄目です。

 

考えてみて下さい。

初めての基板なんて、何がどうなっているかわかりません。

もしかしたら、電源のプラスとマイナスが間違ってショートしているかもしれないのです。

そこに仮に高電圧をかけたら大電流が流れて火事になってしまいます。

 

ですから、

一番最初にやることは電源のショートチェック

です。

ここがクリアできていれば、火事になることはそうそうありません。

逆に言うと、ここでミスすると普通に危険です。

 

1,電源入力のショートチェック

電池やACアダプタからの供給が普通です。

そこに接続される端子間の抵抗を測りましょう。

ここがショートしているのが一番危ないです。

 

2,内部電源のショートチェック

基板の中で3.3Vや5Vなどを生成していると思います。

その3.3VとGNDの間の抵抗を測定しましょう。

ここがショートしている場合、燃えることはめったにありませんが、当然動きません。

 

3,初めて通電

ここまできてから初めて通電です。

 

火傷したり電源を壊したりしないように、上記の順番を守りましょう。

 

以上、小田切でした。

回路シミュレーションをしたい?なら無料のLTSpiceだ!

電子回路をシミュレーションできることを知っていますか?

そういうと、

 

「そんなの何十万とか何百万とかするんでしょ!? そもそもスパコンとかじゃないとできないのでは?」

 

と思う人もいるかもしれません。

電波などを対象とした電磁界シミュレーションとかになると実際その通りです。

普通に数百万円のソフトウェアをメモリ数十GB載せた高いワークステーション上で実行します。

 

しかし、電波ではなく単純に「回路のシミュレーション」ならそんなに大したことはありません。

普通のPCで実行できますし、しかも無料の物があります。

 

リニアテクノロジーが提供している

LTSpice

 

これを検索してDLして、簡単講座も探して試せば一発です。

(あなたが会社員なら商社が無料で会社に使い方を説明しに来てくれます。個人なら普通にネットで講座を探せばOK)

 

注意点として登録されているIC類が全てリニアテクノロジー製のものしか無いこと。

ですが、インダクタ・コンデンサ・スイッチ・トランジスタなどを使用したアナログ回路のシミュレーションではそんなこと関係ありません。

 

ということで一度触ってみることをおすすめします!

 

以上、小田切でした。

インピーダンスコントロールとは?

アートワーク設計で「インピーダンスコントロール」という物があります。

線路の特性インピーダンスをコントロールするわけですが……

 

まず、この「特性インピーダンス」というのが非常に説明しにくいものなんです。

ここでささっと説明するのは非常に難しい!!

ここで数式を駆使して理論をかざす気もないし、そんな元気もありません(汗;

 

あえて言うならば、「信号が伝わっていく速度」と考えて下さい。

この理解でもまちがっちゃいません。

配線というのはインダクタでもあり、近くのGNDとの間にはコンデンサが形成されます。

つまり、急激な電圧変化があってもインダクタが阻害して、さらにコンデンサに充電する必要があるためさらに電圧変動が阻害されます。

つまり、配線の上を電気は光の速度で駆け抜けていきません。

インダクタやコンデンサの阻害を受けてゆっくりすすんでいくんです。

(電気=光の速度と思っていると「え?」と思うかもしれませんが、これがリアルです)

 

ということは、配線の太さ・配線とGNDの距離といったもので、インダクタンスやコンデンサの容量は変化するので、電気の進む速度は変化するわけです。

この速度をきちんとコントロールするのが「インピーダンスコントロール」です。

 

これが必要なのは、特定の高速信号です。

・USB

・Ethernet

・HDMI

こんなような100MHz超え信号はだいたい全部インピーダンスコントロールが必要です。

 

まずこう言った信号を伝えるケーブル(USBケーブル・LANケーブル)自体が、「インピーダンスコントロール」されています。

なので、基板の上の配線も同じように「インピーダンスコントロール」します。

 

そうしないと、基板上でゆっくり進んでいた信号が突然ケーブルに入った途端に早くなったり、逆に遅くなったりします。

長い配線の中でこういう変化があると、そこで信号が劣化するので信号が正しく相手に伝わりません。

ということで、基板上のインピーダンスコントロールをちゃんとして、ケーブルと揃えないといけないわけです。

 

なんとなーくわかりましたでしょうか?

 

以上、小田切でした。

アートワークではDCDCコンバータに要注意!

DCDCコンバータというのは数百kHzから数MHzというそれなりの速度で動きます。

そして、中身は方形波なのでスパイクノイズも凄いです。

そして、さらに大電流です。

 

……ということは、ノイズの塊なのです。

これをなんの考えもなしに基板設計すると酷いことになります。

これに対処するために2つのことを考えます。

 

◯DCDCの電流路を最短にする

だいたいDCDCコンバータというのは

入力パスコン→インダクタ→出力パスコン

というように接続されています。

(間にDCDCコンバータの制御ICが入る)

電流は入力パスコンから出力パスコンまで流れて、最後にGNDを通って入力パスコンに帰っていくわけです。

この経路が長いとノイズを撒き散らします。

なので、入力パスコンと出力パスコンのGNDを出来るだけ近くにして、帰りのGNDの距離を縮めます。

さらに、部品をできるだけ密集させて行きの距離も短くします。

 

◯ノイズを嫌う配線から離す

まずはアナログ回路です。

微小な電圧変化を監視する回路などがある場合、DCDCから極力離します。

そうしないとアナログ信号にノイズが乗ります。

それから見落としがちなのは水晶振動子です。

水晶振動子はuWレベルの微弱な電力で動いているので、ノイズに敏感です。

 

こんな風にDCDCの配置には気をつける必要があります。

 

以上、小田切でした!

アートワークで気をつけるべきVIA

アートワークではVIAをどこにいくつ打つかがすごく大事です。

ということで、いくつかポイントを書いてみたいと思います。

 

◯電源

まず外から電源が入ってきて、フィルタやコンデンサを通ってから内層に接続されます。

その時のVIAの数は要注意です。

一般的に「VIAの直径=流せる電流」です。

VIAがΦ0.5mmで、電源が2A消費するとしたら、最低でも4つ必要ということになります。

ここのVIA数が足りないことが結構あります。

さらに忘れがちなのが、GNDです。

「プラス極はたくさんVIA打ってあるのに、マイナス極のVIAが少ない」なんてことが有ります。

GND側にも同じだけのVIA数が必要です。

 

◯ベタの端

これまでに何度か書きましたが、ベタの端にはVIAが必要です。

 

◯高速信号ラインの両端のGNDベタ

高速信号ラインの電流は近場のGNDを通って返っていきます。

近場のGNDが弱いとノイズが撒き散らされますので、高速信号ラインのGNDには入念にVIAを打ちます。

 

◯パスコンのGND

パスコンのGNDは内層と強く接続されるように、パスコンのGND側にはVIAを打ちます。

 

◯水晶振動子

水晶振動子はuWレベルの微小な電力で動いていますので、周囲のノイズが入り込むと発振が不安定になることが有ります。

なので、水晶振動子と配線の周りのGNDには入念にVIAを打ちます。

 

こんな感じでVIAを打っておけば、ほとんど問題は出ません。

 

以上、小田切でした。

電子部品の納期について

電子部品を手配する場合、一体どれくらいかかるでしょうか。

じつは「一般的に」というのがありません。

めちゃくちゃ幅があるのが現実です。

 

まず、「正規代理店の商社を介した正規ルート」と「市場ルート」の二つがあります。

 

◯市場ルート

「市場」は要は「秋月」「チップワン」「RS」「Digikey」などの通販サイトなどです。

こう言ったサイトは在庫があれば最短で翌日配達されますし、在庫が海外にあっても1-2週で配達されることがほとんどです。

つまり、滅茶苦茶早いです。

ただし「商社」を介していないので、正規ルートではありません。

買った後のサポートがありません。

トラブルが合った時にそのトラブルについてメーカに問い合わせをする経路がありません。

なので、基本的にサポートが重要になる量産品では使いません。

試作品など、台数が限定的でとにかく早く作りたい場合のみ、市場ルートを使用します。

 

◯正規代理店の商社を介した正規ルート

こちらが本流です。

なにかがあった時に商社を介してサポートが期待できます。

なので、量産ではこちらのルートで調達した部品のみ使います。

(まぁ、何事も例外はありますが)

ただし、納期は相当に長いです。

短めの部品で1.5ヶ月はかかります。

本当に納期が長い部品(特にCPUなど)は半年もザラです。

このご時世、部品調達が半年もかかったらその間に商品が時代遅れになりかねません。

開発する時には結構この調達期間が問題になります。

(まぁ、だいたいどうにもならんのですよ……)

 

ということで、電子部品の納期は1日から半年以上と物凄く幅があるのが実際のところです。

 

以上、小田切でした。

ベタの隅にはVIAを打つべし!

基板のアートワークをしていると、L1層やL4層にGNDや電源のベタがたくさんできます。

ベタは大抵の場合、内層や裏面のGNDや電源にVIAを介して接続されます。

 

「VIAがあれば電源やGNDと接続されるんだから、何の問題もないじゃん」

 

と思うでしょうが、そうではありません。

電源もGNDもICの消費電流の変化により微小に電圧が変動しています。

ということは電源やGNDがアンテナに接続されてしまったら、そのアンテナから電圧の変動が電波となって周りに放射されてしまいます。

これはマズいわけです。

 

さて、アンテナというのはなんでしょうか。

いろいろありますが、例えば長い配線の片方を電圧変動させて片方を浮いた状態にすればモノポールアンテナになります。

これだけでアンテナなのです。

さて、ベタを一部でしかVIAでGNDや電源に接続していないとしましょう。

するとそのベタは「電圧変動があって片方が浮いた状態」になってしまいます。

そうすると、このモノポールアンテナと同じ構造になってしまうのです。

 

これを防ぐには「片方が浮いた状態」をなくせば良いのです。

ということで、ベタの隅にはVIAを打ってGNDやVCCと同電位にするように配慮するのです。

 

ということで、ベタの隅にはとにかくVIAを打ちまくりましょう。

 

以上、小田切でした。

電源配線は太く短く

基板のアートワークの際によく言われることが「電源配線は太く短く」です。

 

配線には抵抗成分があります。

これが「細く長い」と抵抗成分が大きくなってしまいます。

「そんな少しの抵抗成分問題ないだろう」と思ってしまいますが、部品によって電圧が微妙に変わる状況は変な不具合を誘発します。

 

ということで、一般的には「1mm/1A」が必要とされています。

1Aを流す配線では1mm,3A流す配線なら3mm以上必要ということです。

これぐらいあれば一般的には大きな問題にならないとされています。

理想的にはもっと太いほうが良いですし、距離も短いほうがいいです。

 

また、配線にはインダクタンス成分、つまりちょっとしたコイルとしても働きます。

ということは、あるICが急激に電流を必要とした時に電源配線が電流をブロックしてしまって電流を供給できません。

だから、各部品にはパスコンをつけるわけです。

もし電源配線が抵抗ゼロ、インダクタンス成分ゼロならパスコンなんていらないわけです。

 

以上、小田切でした。