2017年 12月 の投稿一覧

電源プレーンの隅にはコンデンサを置くべし

例えば4層基板では、

 

L1:部品&配線

L2:GND

L3:電源

L4:部品&配線

 

という層構成が一般的です。

 

実際にはL1とL4の空きスペースにはGNDが貼られるので、ほとんどGNDベタで占められた基盤になるわけです。

ここで問題になるのは電源層です。

電源のベタはGNDベタの上にあるわけです。

そして、もし、電源ベタが一部でしかGNDに接続されていないと、それは実はパッチアンテナと同じ構造になってしまいます。

つまり、「電源ベタでできたパッチアンテナ」の共振周波数のノイズが盛大に放射されてしまうわけです。

普通にマズい。

 

どうすればいいかというと、パッチアンテナの構造を壊せば良いのです。

電源ベタが一部でしかGNDに止められていない構造を、あちこちでGNDに止められている構造にすればいいのです。

実際には電源プレーンの隅にGNDとの間のパスコンを入れればいいんです。

そう、パスコンを追加するだけ。

簡単です。

 

もし、アートワークが完了した図面を眺めて、

「IC類が右側によってパスコンも全部右側に行ってしまった。左側の電源プレーンはどこもパスコンがついてない」

なんてことがあったら、パスコンを2-3個追加して左隅に置きましょう。

 

以上、小田切でした。

部品の型番はどう書くかは生産部(or外注工場)しだい

回路設計をする時に当然部品を選びます。

そして、回路図と一緒に「部品表」という物を作ります。

部品表には「なんという部品」を「何個」使うということをリスト上で書いていきます。

実際には大抵エクセルファイルです。

 

しかし、部品にはいろいろな表記があります。

例えば、抵抗を「100Ω/1005」と書いてもいいですし、「KOA RK73B1ETTD101J」と全部指定することも出来ます。

 

どちらが正しいかというと、生産部や工場次第です。

たとえば、「生産部・工場ですでにラインナップしている抵抗を使うからサイズと抵抗値だけ指定してくれれば勝手に選ぶよ」という事があります。

その場合は型番を書くと逆に迷惑になりますので、「100Ω/1005」と書いたほうがいいです。

逆に「部品を新たに買うor自分で型番いれる労力をかけられないから、全部そちらで一言一句間違いなく入れてくれ」という場合もあります。

 

また、部品は紙テープなどに貼り付けられた状態で納入されるのですが、それもバリエーションが有るのです。

どういう幅の紙テープか。

どの間隔で部品があるか。

実装マシンの受け入れられる形状の紙テープ仕様にしないといけませんが、ハッキリ言って回路設計者はそこまで知りません。

「部品型番は入れるけど、テープ仕様はどれが良いかわからないからそっちでなんとか選んでくれ!」となるのが普通です。

 

以上、小田切でした。

基板の色は何で決まる?

アートワークする時に基板の仕様を規定しますが、その時に「色」というのがあります。

さて、色って何で決まるのでしょうか。

実は基板の色は基板の材質や層構成で決まっているわけではありません。

→基盤を作る工程で上から塗るレジスト剤の色で決まっています。

 

基本的に基板というのは基板工場で作るもので、そこで扱える基板はほぼ決まっています。

特別な構成の基板をお願いしても「それは扱ってない」となってしまいます。

ところが、基板の色はレジスト剤の色さえ変えればいいだけなので、特別な色でもそのレジスト剤を買ってくればいいだけなので簡単に変えられます。

ただし、変わった色だと頼んだあなたしか使わない場合がありますので、「あまったレジスト剤を買い取ってくれ」と言われることもありますので、その点は注意です。

 

基本的に緑にしておけば追加料金はかかりませんが、追加料金さえ払えば色は工場によらず以外と自由ということです。

 

以上、小田切でした。

紙の上で考え、画面の上で作れ!

今日もまたライフハックと言うかTIPS的な事。

でも、地味なようですごく重要な考えです。

これがないと自分の仕事の効率がガタ落ちです。

 

やり方は簡単。

じっくり考えないけないといけないことや、チェックのときは全て印刷しろということです。

頭をフル回転する時にあれこれファイルを開いたりスクロールしていると、実は相当脳みそのパワーを無駄にしています。

一度全部紙に印刷して机の上いっぱいに広げましょう。

そうするとこれがやりやすいのなんの!!(検索が早い。全部がまとめて頭に入ってくる)

心理的疲労が少なく作業が進みます。

画面でPDFを見ているのと違って、資料全てに0.5秒で文字を書けるので滅茶苦茶作業が早いです。(チェックポイントの発見&マーク付が早い)

 

それから、理屈で説明できませんが、なぜか画面を見ているときより紙を見ているときのほうが脳みそが回転します。

紙上でいろいろチェックすることになれると、画面上でチェックしているときにすごいストレスを感じます。

 

ただし、紙上で文章を書く作業をしてはいけません。

「ここにこの回路を置く」とか「ここにこの章を置く」みたいな大まかな作業や、誤字のチェックはOKですが、

紙の上で長文を書き出すと駄目です。

ペンで文字を書くよりキーボードで書いたほうが早いですし、修正も楽です。

 

ということで、紙と画面を使い分けてサクサク仕事を終わらせましょう。

 

以上、小田切でした。

 

 

 

 

 

仕事やいろいろなことを通して、達して考えです。

文書を書く時に「誰に向けて書くのか」に気をつけよう

テンプレートがあってそれを埋めるだけなら簡単ですが、設計書など自分で自由テキストをたくさんかかないといけないことは結構あると思います。

そんなときに、「何を書けば良いのか」と固まってしまう人が結構居ます。

 

頭のなかにはいろいろな情報がこんがらかって詰まっています。

でもそれをどうやって整理すればいい?

どうやって表現すればいい?

どこまで書けばいい?

コレがわからなくて固まるのです。

 

ポイントは「誰に向けて書くか」ということです。

その製品について詳しい人にむけて書くのか、それとも何も知らない人に向けて書くのか。

これを決めると道筋がすっとあきらかになります。

 

例えば設計書では、

「その製品について知らないけれども、電気の基礎知識程度はわかる人」

を想定して書きます。

 

→どこまで書けばいい?

・その製品がどういうものか説明する必要があります

・電気の基礎知識まで書く必要はありません

・どの部品を使うのかといったことや、その部品がどういうものかを説明する必要があります

 

→どうやって表現すればいい?

・電気の基礎知識がある人なので、電圧や電流をそのまま書けばいいです。

 

→どうやって整理すればいい?

「電気の基礎知識がある人にどうやって説明すればいいか?」と考えて、試しに口でエア説明してみます。

馬鹿らしく見えるかもしれないけど、実は有効だと最近気が付きした。

すると、こうなります。

・製品の概要説明

・その実現方法

・難しい点や問題点

・その対応として取った手段

・製品の基本的仕様

・実際に使用している部品

・その部品の仕様

こんな感じに口で説明する順番で並べていくとわかりやすい文書になります。

 

以上、小田切でした。

書類の用語の統一について

回路設計から離れますが、実際の業務で超大事な文書について少し。

 

設計書でも仕様書でもなんでも、とにかくいろいろな用語が出てきます。

 

製品名

例えば製品名Aがあって、それが後で改名されてA’になったとします。

その時、書類の中にAとA’が混在すると、後の時代の人は最終的なA’という名前しか知らないので、「Aってなに?」となるわけです。

へたすれば「A仕様書」なんて書類があっても「関係ない製品の書類だな」と無視されてしまうことだってあるわけです。

ですから、プロジェクトが終了する時に、古い名前は全部新しい名前に改名してから終了しないといけません。

 

類義語

ハードウェアで上手い例が出ないので、ソフト的な例を出しますが、何かの発送管理のシステムが合ったとします。

そのなかである部分では「送り主」と書かれていて、ある部分では「贈り主」と書いてあるとします。

これ、同じものを指しているかそうでないかわかりますか?

分かるわけがありません。

システムを作った人が意図して違う名前にしたのか、それともただの変換ミスなのかわかりません。

こういうものはいらぬ誤解を生みます。

実際、人間は意識せずに類義語を使っているので、こういう事例は多いです。

面倒ですが、類義語は直して一つの言葉に統一していく必要があります。

 

以上、小田切でした。

回路設計に設計書は必要か?

いきなり、答え。

 

必要

 

自分が最初に回路設計の仕事を始めた頃、「え~ハードウェア設計書? そんなものつくるの面倒だ~」とネガティブに思ったものです。

しかし、経験を重ねていくとすごく大事だということが分かってきました。

 

設計書を書くと何が良いのでしょうか。

 

設計書を書くと仕様が決まる

回路設計を引く時、なんとなく部品を選んでなんとなくつなぐ・・・なまじ経験があるとそれが出来てしまいます。

しかし、そのやり方は行き当たりばったりになります。

どういうコネクタがあって、どういう電源入力範囲で、静電気対策するのはしないかとか、そういったことが曖昧になります。

「とりあえず5Vを入れれば動きますよ。え、最低電圧と最高電圧? さぁ………?」

みたいな設計になります。

設計書を書くときには「入力範囲:◯V~◯V」と書かないといけません。

それを書く時にいろいろ検討するので、仕様が決まるわけです。

文書化しないといつまでの仕様はあいまいなままです。

設計書があると専門家以外とコミュニケーションできる

回路図は完全に専門家でないと読めません。

しかし、設計書は日本語なので、回路に詳しくないお客さんでもだいたいわかります。

「そうか、この製品の動作温度範囲は◯◯なのか。こういうコネクタがあるのか。メモリはこれだけあるのか。ん? うちはこういうコネクタがほしいんだけど、追加してくれる?」

「わかりました。追加しましょう」

みたいな会話ができます。

設計書がないと会話になりません。

会話ができないとお客さんが欲しいものと違うものが出来ます。

 

設計書があると情報が一箇所にまとまる

設計をしていくと、メモやいろんなファイルが溜まっていきます。

そしてめちゃくちゃになります。

しかし、設計書があると重要な情報は全部そこに書き加えていけばいいので、情報が散らばりません。

もちろん、設計書に書かない細かいメモやファイルは溜まっていきますが、そういったものは最悪なくなってもなんとかなる情報です。

どうしても必要な情報が一つにまとまるのはものすごい利点です。

誰かに説明するときも、「この設計書に目を通して」で全体のイメージが伝わるのですごく楽です。

 

と、こんな感じで、書くのは大変ですが、コミュニケーションや後のことを考えると非常に大事な文書です。

書きましょう!(使命感)

 

以上、小田切でした。

レギュレータのパッケージってどう選ぶ?(初心者向け)

レギュレータのデータシートを見ていると、一つの品種で5個も6個もパッケージが合ったりします。

さて、どれを選べばいいでしょう。

 

大きいのを選ぶ?小さいのを選ぶ?

そもそもなんでいくつもあるわけ?

 

正解は

「実装能力の限界と発熱量で選ぶ」

です。

 

小さい基板にたくさんの部品を詰め込まないといけない場合は、とにかく小さい部品を使いたいわけです。

ですから、基本的に一番小さい部品を選びます。

しかし、あまりに小さいと基板に部品を載せる工場から「そこまで小さいと無理!><」と言われます。

そこで工場が「これなら大丈夫」と言ってくれる一番小さいサイズの部品を選びます。

 

次に、発熱量です。

部品によりますが、「許容損失」または「熱抵抗」が定義されています。

面倒なので今回省きますが、要はどの程度の発熱量に耐えられるかということです。

この値は「部品のサイズ」と「部品と基板の結合度合い」で決まります。

部品が大きいほど大きな発熱に耐えられますので、発熱量を計算してそれに耐えられる大きさのパッケージを選びます。

 

こうしてパッケージが決まるわけです。

 

以上、小田切でした。

「Industrialな部品」ってどういうこと?(初心者向け)

電子部品のデータシートを見ていると「Industrial」と書いてある部品があったりします。

一つのデータシートの中でも型番が列挙されていて「この型番はIndustrial.この型番はIndustrialじゃない」と書かれている場合もあります。

 

Industrialってなんでしょうか。

 

辞書で引けば

「Industrial=工業用」

とわかります。

 

が、工業用って何?

何が違うの?

 

メーカの言い分はいろいろありますが、実際には「動作温度範囲」が違います。

例えばあるICの動作温度範囲は「0~70℃」。

でも、「Industrial」と書いてある型番を選択すると動作温度範囲「-40~85℃」になったりします。

つまり、低温と高温の両方に温度範囲が拡大しているんです。

(低温だけに拡大という場合もあります)

 

ところでちょっと疑問が出ませんか?

Industrialだろうとそうでなかろうと、機能は同じです。

機能が同じということは、きっと同じマスクで同じシリコンをつかって同じチップを使っているはずです。

ということは、Industrialと書いてあってもなくても中身は同じじゃないか。

Industrialって書いて無くてもIndustrialと同じ温度で動いてしまうのではないか?

 

正解は……たぶんその通り。(中身は同じで型番違うだけ)

もしかしたら違うかもしれませんが、その当たりはメーカーは教えてくれません。

一番の違いは「保証があるかないか」です。

動作温度範囲「0~70℃」をうたうICを-10℃で使って不具合が出ても文句は言えないですが、

「-20~85℃」だったら文句をいえます。(たとえ中身が同じでも)

そういうところが違いです。

 

以上、小田切でした。

やけに短いデータシートって何?

電子部品のデータシートが欲しくて検索していると、やけに短いデータシートにぶつかることがあります。

例えば、一般的なデータシートはトランジスタみたいな部品で10ページ以上、CPU的なものでは1000ページを軽く超えることもあります。

 

ところが、明らかに中に色々なブロックが入っている規模の大きなICなのに、データシートが2ページとか4ページと言う場合があります。

 

これはどういうことでしょうか?

 

これはメーカーが仕様を一般公開していないということです。

つまり、一般に公開しているのは「特徴」と「ピン配置」だけで、中の機能や電圧についてはすべて非公開ということです。

めったにないのですが、

・一部のアナログIC

・特定メーカー向けの部品

・アジアメーカー

・セキュリティIC

ではそういうことがあります。

 

詳細なデータシートはメーカーから入手しなければならないので、趣味でやっている場合はこういった部品の使用は諦めるのが懸命です。

業務で使用する場合も、「特定メーカー向けだから駄目」「NDA契約をしないと駄目」と一筋縄で行かない場合が多いです。

 

ということで、「ネットで検索したら短いデータシートが出てきた」は要注意。

その部品はよほどの理由がない限り、使うべきではありません。

 

以上、小田切でした。