アートワーク

アートワークで気をつけるべきVIA

アートワークではVIAをどこにいくつ打つかがすごく大事です。

ということで、いくつかポイントを書いてみたいと思います。

 

◯電源

まず外から電源が入ってきて、フィルタやコンデンサを通ってから内層に接続されます。

その時のVIAの数は要注意です。

一般的に「VIAの直径=流せる電流」です。

VIAがΦ0.5mmで、電源が2A消費するとしたら、最低でも4つ必要ということになります。

ここのVIA数が足りないことが結構あります。

さらに忘れがちなのが、GNDです。

「プラス極はたくさんVIA打ってあるのに、マイナス極のVIAが少ない」なんてことが有ります。

GND側にも同じだけのVIA数が必要です。

 

◯ベタの端

これまでに何度か書きましたが、ベタの端にはVIAが必要です。

 

◯高速信号ラインの両端のGNDベタ

高速信号ラインの電流は近場のGNDを通って返っていきます。

近場のGNDが弱いとノイズが撒き散らされますので、高速信号ラインのGNDには入念にVIAを打ちます。

 

◯パスコンのGND

パスコンのGNDは内層と強く接続されるように、パスコンのGND側にはVIAを打ちます。

 

◯水晶振動子

水晶振動子はuWレベルの微小な電力で動いていますので、周囲のノイズが入り込むと発振が不安定になることが有ります。

なので、水晶振動子と配線の周りのGNDには入念にVIAを打ちます。

 

こんな感じでVIAを打っておけば、ほとんど問題は出ません。

 

以上、小田切でした。

ベタの隅にはVIAを打つべし!

基板のアートワークをしていると、L1層やL4層にGNDや電源のベタがたくさんできます。

ベタは大抵の場合、内層や裏面のGNDや電源にVIAを介して接続されます。

 

「VIAがあれば電源やGNDと接続されるんだから、何の問題もないじゃん」

 

と思うでしょうが、そうではありません。

電源もGNDもICの消費電流の変化により微小に電圧が変動しています。

ということは電源やGNDがアンテナに接続されてしまったら、そのアンテナから電圧の変動が電波となって周りに放射されてしまいます。

これはマズいわけです。

 

さて、アンテナというのはなんでしょうか。

いろいろありますが、例えば長い配線の片方を電圧変動させて片方を浮いた状態にすればモノポールアンテナになります。

これだけでアンテナなのです。

さて、ベタを一部でしかVIAでGNDや電源に接続していないとしましょう。

するとそのベタは「電圧変動があって片方が浮いた状態」になってしまいます。

そうすると、このモノポールアンテナと同じ構造になってしまうのです。

 

これを防ぐには「片方が浮いた状態」をなくせば良いのです。

ということで、ベタの隅にはVIAを打ってGNDやVCCと同電位にするように配慮するのです。

 

ということで、ベタの隅にはとにかくVIAを打ちまくりましょう。

 

以上、小田切でした。

電源配線は太く短く

基板のアートワークの際によく言われることが「電源配線は太く短く」です。

 

配線には抵抗成分があります。

これが「細く長い」と抵抗成分が大きくなってしまいます。

「そんな少しの抵抗成分問題ないだろう」と思ってしまいますが、部品によって電圧が微妙に変わる状況は変な不具合を誘発します。

 

ということで、一般的には「1mm/1A」が必要とされています。

1Aを流す配線では1mm,3A流す配線なら3mm以上必要ということです。

これぐらいあれば一般的には大きな問題にならないとされています。

理想的にはもっと太いほうが良いですし、距離も短いほうがいいです。

 

また、配線にはインダクタンス成分、つまりちょっとしたコイルとしても働きます。

ということは、あるICが急激に電流を必要とした時に電源配線が電流をブロックしてしまって電流を供給できません。

だから、各部品にはパスコンをつけるわけです。

もし電源配線が抵抗ゼロ、インダクタンス成分ゼロならパスコンなんていらないわけです。

 

以上、小田切でした。

電源プレーンの隅にはコンデンサを置くべし

例えば4層基板では、

 

L1:部品&配線

L2:GND

L3:電源

L4:部品&配線

 

という層構成が一般的です。

 

実際にはL1とL4の空きスペースにはGNDが貼られるので、ほとんどGNDベタで占められた基盤になるわけです。

ここで問題になるのは電源層です。

電源のベタはGNDベタの上にあるわけです。

そして、もし、電源ベタが一部でしかGNDに接続されていないと、それは実はパッチアンテナと同じ構造になってしまいます。

つまり、「電源ベタでできたパッチアンテナ」の共振周波数のノイズが盛大に放射されてしまうわけです。

普通にマズい。

 

どうすればいいかというと、パッチアンテナの構造を壊せば良いのです。

電源ベタが一部でしかGNDに止められていない構造を、あちこちでGNDに止められている構造にすればいいのです。

実際には電源プレーンの隅にGNDとの間のパスコンを入れればいいんです。

そう、パスコンを追加するだけ。

簡単です。

 

もし、アートワークが完了した図面を眺めて、

「IC類が右側によってパスコンも全部右側に行ってしまった。左側の電源プレーンはどこもパスコンがついてない」

なんてことがあったら、パスコンを2-3個追加して左隅に置きましょう。

 

以上、小田切でした。

基板の色は何で決まる?

アートワークする時に基板の仕様を規定しますが、その時に「色」というのがあります。

さて、色って何で決まるのでしょうか。

実は基板の色は基板の材質や層構成で決まっているわけではありません。

→基盤を作る工程で上から塗るレジスト剤の色で決まっています。

 

基本的に基板というのは基板工場で作るもので、そこで扱える基板はほぼ決まっています。

特別な構成の基板をお願いしても「それは扱ってない」となってしまいます。

ところが、基板の色はレジスト剤の色さえ変えればいいだけなので、特別な色でもそのレジスト剤を買ってくればいいだけなので簡単に変えられます。

ただし、変わった色だと頼んだあなたしか使わない場合がありますので、「あまったレジスト剤を買い取ってくれ」と言われることもありますので、その点は注意です。

 

基本的に緑にしておけば追加料金はかかりませんが、追加料金さえ払えば色は工場によらず以外と自由ということです。

 

以上、小田切でした。

アートワークするときの基板の選び方(材質・層構成)

この記事も実務者向けですが、それほど経験がない人向けに書いていますので、

かなり乱暴なのでご注意を。

ただ、実際こうしておけばほとんど問題がありません。

(逆に相応の知識がないとこれ以外のことをすると危険)

 

材質の選び方

FR-4です。

呪文のように覚えて下さい。

FR-4です!!

ガラスエポキシ基板で、難燃性・低誘電率でスタンダードな材質です。

「紙フェノールのほうが安い」とかそういう情報もありますが、高品質なFR-4がスタンダードになったため、昔ほどの価格差はありません。

変な材質を選ぶと変な制約が出て苦労することになること請け合い。

特殊な製品でない限り、スタンダードなFR-4にしておけば一番問題少ないです。

 

層構成の決め方

層構成というのは層の厚みや重ね方の指定です。

「厚さ◯◯umのコアに◯umの銅箔を重ねて、さらにプリプレグを◯umにして……」

というような情報です。

ですが、回路設計者がこれを一つ一つ指定することはありません。

なぜなら、工場で扱っている基板の仕様があって、

「こんな仕様のもの作って下さい!」

と言っても

「うちじゃそんなもの作ってない! 他所に行ってくれ!」

で終了なんですよ。

基本的に基板を作る工場というのは「工場標準の層構成」というものを持っていて、それしか作れません。

なので、量産するのであれば量産する工場の仕様どおりの基板を作るしかありません。

(試作で量産工場に頼めない場合は、量産工場と同じ層構成・材質でつくれる試作工場を探して、そこで作ってもらう。とにかく量産工場に合わせる!)

 

となると、設計者は何も考えなくていいかというとそんなことはなく、

「基板の厚さ」

「層数」

を決める必要があります。

 

基板の厚さ

これがいろいろありまして、私の経験だけでも

・1.6mm

・1.0mm

・0.8mm

の3種類があります。

他にも1.2mmだとか0.4mmだとかあるようです。

「どうしてもこの厚みが必要だ」という場合は指定してもいいですが、

標準は1.6mmです。

1.6mmが一番流通していて、どこの工場でも作れて、価格も一番安くて、頑丈。

よほどの理由がない限り1.6mmにするのが無難です。

1.6mmだとかなり硬いので取扱的にも楽です。

逆に0.8mmなどになると本当にペラペラなのでラフに扱うと簡単に折れますし、すぐしなります。

ということで、理由がない限り「1.6mm」です。

 

層数

さて、こいつが厄介です。

経験があれば「これは4層でいいかな」とか想像できますが、経験がないと層数の判断ができません。

 

・2層(ちょっと安い)※バカ安ではない

・4層(普通の値段)

・6層以上(高い)

 

面積にもよりますが、配線の引き回しにもよるので一概に言えません。

なんとなく感覚を書いておきます。

 

・2層基板

ピン数が20pin以下の超小型CPUなら配線数も少ないので裏表だけの2層基板で配線できるかもしれません。

ただし面積が小さいと困難です。

2層基板の問題は、信号の配線を引けたとしても、(信号線が基板を横切るので)電源やGNDをつなげられないことです。

実際に経験してみるとわかりますが、2層基板は驚くほど早く限界が来ます。

「え、これっぽっちの配線を引いただけで繋げなくなるの?」と驚くことうけあいです。

また、4層基板より安いとは言え、昔ほどの価格差ではないので、大きな基板を大量に生産しない限り価格メリット低いです。

個人的にはよほど低密度の基板でない限りはおすすめしないです。

 

・4層基板

20ピン以上から100ピン程度のCPUを使うなら、4層基板が必要です。

4層基板の場合、裏と表を信号の配線に使い、中身の2層を電源とGNDの配線に使います。

そのため、2層基板で電源やGNDを繋げずに苦労していた問題が解決します。

2層基板より少し高いですが、配線自由度が圧倒的に増すために、基本的に4層基板を多用します。

個人的には大抵の場合で4層基板をおすすめします。

配線がきれいになるのでノイズも抑制しやすいです。

 

・6層以上

BGAなどピン数が200を超えるようなCPUになると、4層でも限界が来ます。

そうすると6層以上の基板が必要になります。

アートワークをするのもすごく時間がかかる上に、層が多すぎて検図する際にもものすごくわかりにくいです。

なので、できれば使いたくない(爆)

 

と、こんな雰囲気です。

なんとなく、わかりました?

 

以上、小田切でした。

基板アートワークの用語集

アートワークに関わる用語集をまとめてみることにしました。

 

◯TOP面(部品面)

基板の表のこと

 

◯BOTTOM面(ハンダ面)

基板の裏のこと

 

◯層構成

何層の基板にして、各層の厚みをどうするかと言った仕様のこと

 

◯VIA(ビア)

層と層と貫く電極のこと。

VIAによって各層を接続する。

 

◯IVH(インビジブルビアホール)

見えないVIA。

普通のVIAは全層を貫く。(例えば4層基板なら、4層全てを貫く)

しかし、それではスペースが無駄になってVIAを高い密度で配置することが出来ない。

そんなときにIVHをつかう。

IVHは「6層基板で2層~5層だけつなぐ」みたいに基板の中の層だけを接続するときに使う。

ただし高いので、6層以上の高密度基板でしか使わない。

 

◯FR-4

基板の素材のこと。

いわゆるガラスエポキシ基板。

ほとんど場合この素材しか使わない。

 

◯ベタ

広い面積のパターンのこと。

「ここにGNDベタを入れて下さい」のように使う。

 

◯実装禁止領域

ネジ穴の周辺など、筐体と筐体が接する部分がある。

そういった点をアートワーク担当者に指示する。

「このネジ穴から半径6mmは実装禁止です」

 

◯高さ制限

筐体との関係などで、高さ制限が加わることがある。

「この領域はたかさ制限1mmでお願いします」のように使う。

 

 

 

部品面

基板のアートワークとは?(初心者向け)

「アートワーク」という言葉があるのですが、回路のことを知っている人でも案外知られていないようです。

 

アートワークの意味

一般的には絵画や写真のことを指します。

回路設計の業界では基板のパターンのことを指します。

「アートワーク設計」といったら基板の上にどう部品を置いてどう配線するかを決めることにあたります。

 

 

アートワークは誰がやる?

基本的にはアートワークCADを扱う専門の人が行います。

注意してほしいのは、大抵、回路を引く人とは別の人であるということです。

アマチュアでは回路も引いてアートワークも自分でやるという人が居ますが、実際の業務では「回路図を引く人」と「アートワーク(基板の設計)をする人」は別の人になります。

回路もアートワークも一人でやっていたら開発時間が伸びてしまいます。

回設計者は回路図をアートワークの専門家に依頼して、アートワーク中に別の作業を行います。

こうしないと開発期間が2倍必要になってしまいます。

 

アートワークの費用は?

結構業者さんによって違うのですが、私の経験では基板一枚で10~30万円くらいが多いです。

基本的に時間計算なので、費用は設計期間に比例します。

 

 

アートワークの期間は?

コネクタと部品が数個しか載っていない超絶簡単な基板で2-3日、小さなマイコンが乗っている基板で2週間、Linuxが載るような大規模CPUが載っている基板で一月ぐらいです。

ものすごく簡単な基板でも、回路設計者とアートワーク業者間のやりとり(確認と指示)が発生するため1日でできることはありません。

最低2-3日はかかります。

 

アートワークの依頼方法は?

「回路図」「部品表」「外形図」「基板仕様」「ネットリスト」の5つが必要です。

・回路図:PDFにして渡します

・部品表:EXCELなどコピペ可能なファイルで渡します。これを元に部品を置くためのパッドを設計します。

・外形図:基板のサイズやコネクタの位置が分かる図面です。簡単ならPDFなどでいいですが、複雑な形だとDXFデータなどの提出を求められることがあります。

・基板仕様:基板の厚み、色、層構成、注意点などを列挙した資料です。これがないと思っているのと違うものが出来ます。

・ネットリスト:回路設計CADで出力してできるファイルです。どの部品とどの部品が接続されているかを示した情報になります。アートワーク業者は実際にはこのファイルを元にして設計を行います。ちなみに、ネットリストとひとくちで言ってもいろいろな形式があるため、業者さんに「この形式で出力して下さい」と形式を指定されることもあります。

 

 

アートワークは業者に任せれば万全?

NO!これだけは絶対にNO!

上記の仕様を提出して基板を設計してもらうわけですが、万全なものができてくるなんて思ってはいけません。

コネクタの位置など指定があいまいであれば当然やり取りが必要です。

また、もし全ての指示が完璧でその通りに部品を配置してくれたとしても、それでもまだ不十分です。

大抵のアートワーク業者は……怒られそうな話ですが、

「アートワークCADの専門家であって、アートワークの専門家ではありません」

 

残念ながらこれがリアル。

アートワークCADの専門家ということは、こちらの指示通りに作ってくれるということです。

しかし、アートワークの専門家ではないということは、「電気的なことを考慮した配線の引き方」が全然出来てない!ということです。

 

今後書いていきたいと思いますが、正しいアートワークとは、

・電源線が太く短いこと

・高周波電流の閉ループが小さいこと

・表層GNDと内層GNDの結合が強いこと

・高周波ラインの周囲のGNDが内層GNDと密接続されていること

・高速信号同士が結合しないこと

・高速信号がアナログ回路と結合しないこと

・高周波吸収用パスコンがICの直近に来ること

・静電気の侵入口と部品類の間に保護素子が配置されること

・アンテナになってしまう配線がないこと

etc….

とにかく文章で書くとキリがないほどいろいろな条件を満たさないといけません。

 

こういった条件を満たさないと、

・ノイズに弱い:外来ノイズですぐ誤動作する

・ノイズを出す:ノイズを撒き散らすので各種規格に引っかかって出荷できない

・すぐ壊れる:静電気ですぐ破損する

・不安定:電源のフィードバックやアナログ部分の設計が悪いと挙動がおかしくなる

といった問題が発生します。

 

つまり、アートワーク設計というのは回路設計と同じぐらい超重要な要素なわけです。

 

しかしここはアートワーク業者に期待しても、ほとんど無理です。

なので、回路設計者かアートワークチェックの専門家がちゃんとチェックしてあげないといけません。

 

そういえば、私もアートワークチェックの仕事を引き受けていました。

もしチェックできる人が居なければ一言声をかけて下さい(売り込み)

 

以上、小田切でした!