普通のダイオードとショットキーダイオードの逆方向電流の比較

意外と設計者が気にしていないのが、ダイオードの逆方向電流。

「逆方向電流」とはダイオードに逆方向に電圧をかけた時に流れてしまう電流のことです。

大電流が流れる電源ラインなどではほとんど気にすることがないですか、電流が少ないラインや信号部では結構重要になってきます。

これが原因で電池が早く消耗したり、想定外の電圧になってしまったりします。

 

ということで、ちょっと実際のダイオードでどれ位の逆方向電流が流れるか比較してみようと思います。

 

今日の比較対象

ROHM当たりから表面実装品を引っ張ってこようと思ったのですが、ROHMはデータシートの一部でも転載するなとうるさいので止めておきます。

著作権上、説明に必要な妥当な範囲での引用はOKなはずなんですが、難を避ける意味でROHMはやめておきます。

ちなみに、ROHMは国内メーカーでダイオードやトランジスタをラインナップしていてすごく使いやすいメーカーですよ。念のため。

 

ということで、今日はアマチュアな人でもよく使う秋月で扱っているリード品のダイオードで比較したいと思います。

実務では表面実装品しか使いませんが、特性は似たようなものなので良いでしょう。

1Aクラスということで、この二つを選びました。

普通のダイオード:PANJIT 1N4007

ショットキーバリアダイオード:PANJIT 1S4

 

電圧降下(順方向電圧)の比較

では最初に両方共に定格電流である1Aを流したときの順方向電圧を見てみましょう。

これが小さいほどダイオードとして優秀です。

 

1N4007:

1n4007Vf_spec

1N4007は1Aで1.1Vです。

普通のダイオードであればこんなものです。

 

1S4:

1s4Vf_spec

1S4は1Aで0.5Vです。

なんと1N4007の半分!

さすがショットキーバリアダイオードです。

 

 

逆方向電流の比較

本題の逆方向電流です。

 

1N4007:

image

最大電圧で25℃で5uAです。

1N4007は1000V耐圧なので、なんと逆方向に1000Vも掛けても5uAしか流れません。

 

1S4:

image

対して、1S4は25℃で0.2mA = 200uAです。

なんと1N4007の40倍です。

しかし忘れてはいけないことがあります。

1S4の耐圧はわずか40Vです。

なので、逆方向に40Vかけると200uA流れてしまうということになります。

 

結論

定格電流が同じ物同士で比較すると、やっぱりショットキーバリアダイオードは逆方向電流が大きい

5uA@1000Vと200uA@40Vの違いは大きいです。

このことを頭においておくといつか役に立つときがやってきます。

 

以上、小田切でした。

回路設計の仕事の流れ(手順)とは?(初心者向け)

回路設計と聞いて、

「まぁ、なんかあの四角と線でできた不思議な絵を書いているんだよね」

ぐらいは想像できても、一体何をしているのかイメージできない人が多いんじゃないでしょうか。

また、回路がある程度分かる人でも、実際の回路設計技術者がなにをやっているかなんて知らないと思います。

今日はそこについて簡単に説明したいと思います。

 

いきなり回路を引くわけじゃない

「回路設計の仕事なんだから、なんか頼まれたらすぐに回路図を書き始めるんでしょ?」

そんなわけはない。

仕事は段取りが9割というじゃないですか。

というか、まず、それはできないです。

自分も最初にこの仕事を始めたときはいきなり引こうとしましたが、先輩に滅茶苦茶怒られました。

きっとあなたも怒られることになるのでそれは止めましょう(笑)

 

 

仕様を引き出す

まず最初に営業経由でお客さんから仕様がやってきます。

その資料は様々です。

プレゼン資料みたいになっていて、目的・デザイン・機能・サイズまで規定されているものもあれば、

箇条書き程度しかないものもあります。

しかしどちらの場合も、設計者ではない人が作っている資料なので、基本的に設計者が欲しい情報が入っていません。

例1:

「ん? LEDってあるけど、これ何色なんです?」

「赤と緑の二色LEDで」

「書いてないじゃないか……」

 

例2:

「USBって書いてあるけどこの文面だとUSBから充電するだけってことだよね?」

「いやデータ通信もするらしい」

「この文面じゃ分からないよ」

 

例3:

「スイッチか~、プッシュタイプでいいのかな?」

「シャッターボタンと保存ボタンと電源ボタンが欲しいって」

「ちょっとまって、スイッチ3つとか読み取れないから」

 

例4:

「後でソフト屋さんに確認しないといけないけど、CPUのROMは64kBもあれば十分そうだね」

「いや、なんかログデータを保存するので1MB必要なんだって」

「ちょっとまって、この資料からそんなこと読み解ける人が居たら呼んできてよ」

 

例5:

「なるほどこういう機能でこういうインターフェースね。……ん、ちょっとまった、こんなサイズで収まるわけがないと思うんだけど」

「え? 大丈夫って言っちゃったよ、あはは」

「無理ゲーすぎる」

 

なにやら愚痴っぽい会話ばかりになりましたが、まぁ実際こういうものです。

渡された資料を信じ込んで作ると大変なことになるので、ちょっとでも怪しいと思ったところはとにかく聞きまくります。

この時に「お客さん側の担当者」と「自分」の間に人が何段もあると大変です。

(例えば、自分→会社の営業→商社→客先会社の営業→客先会社の上司→本当の担当者)

伝言ゲームで話が変わったり、返信が来るまで一週間以上かかったりして、一向に話が進みません。

なので、あなたが担当者になったときは、非公式でもいいので向こうの本当の担当者とのホットラインを作ることを激烈におすすめします。

 

 

仕様を決める

いろいろ確認しながら仕様を確定していき、なんとか仕様をまとめます。

例えば、

・製品の概要

・電源

・サイズ

・インターフェース

・LED

・スイッチ

・CPU型番

etc

いろいろ。

 

設計書の作成

上で決めた仕様とそれを実現するための部品を選定します。

そして、上の仕様と部品と選定理由などを書き下した設計書というものを作ります。

この書類を書くのが非常に大変なんですが、やっぱり作っておかないと後でトラブル出ます。

この設計書についてはいずれ語りたいです。

 

回路図作成

ここまで来てようやく回路図を引けるようになります。

設計書ができたタイミング、あるいは作りながら回路を引いていきます。

同時になる場合も多いです。

仕様や部品の選定は回路図を引く前にも決められますが、計算する部分もあるので、そこは回路を引きながら計算の中身を設計書に記述することになります。

 

後工程へ

回路図ができたらアートワーク(基板のパターン設計)に進みます。

ここは回路設計者と違う人や外注業者の場合が多いです。

 

おおまかにですが、こんなイメージです。

 

以上、小田切でした。

LED(発光ダイオード)に静電気が飛んだときの保護について

LEDというのは筐体表面に人が触りやすいところに配置されます。

 

普通、

「でも、筐体の素材が間に入っているので、まぁ大丈夫でしょ」

と思うんですが・・・

 

実のところ、LEDの周りを筐体が完全に覆っていればめったに問題ありません。

問題は、筐体の合せ目にLEDがある場合ですよ。

例えば、筐体が上と下に分かれていて、カパッと組み合わせる。

そうするとその組み合わせた部分にわずかながら隙間ができます。(段とかついていて密閉に近い構造でもわずかな隙間がある場合があります)

すると静電気はどんなわずかな隙間も突き抜けていく嫌な奴ですので、そういった隙間から基板に侵入します。

そこにLEDがあると……アウチ! ってなわけです。

 

そうすると、特に基板の隅にあって筐体の隙間に近いLEDには必ず対策を加えないと危ないです。

恐らく静電気試験の際にLEDが死ぬでしょう。

 

ということで、どういう対策を加えるかということですが……

正直な話、適当に適当な耐圧のバリスタを加えるだけでも案外なんとかなっちゃったりします。

真面目に部品選定していなくても効果が大きかったりするんですよね。

でも、今回は真面目に考えてみたいと思います。

 

典型的なLED点灯回路

 

LED静電気1

 

よくあるLED点灯回路はこんな感じです。

LEDを電源につっておいて、トランジスタで電流を引いて光らせます。

 

さて、静電気が問題になるのはハイインピーダンスなラインです。

つまり、LEDであれば光っているときより消灯しているときのほうが静電気に対して無防備なわけです。

ということで、消灯しているときの回路を示してみましょう。

 

典型的なLED点灯回路の消灯時

 

LED静電気2

 

トランジスタがONしていないのでハイインピーダンスになっています。

ちょっと乱暴ですが、抵抗R1の先に何もつながっていないのと同じような状態と考えられます。

すると上のような気持ち悪い回路図になります。

 

 

じゃあ、ここで静電気を掛けてみましょう。

+8000Vの静電気を帯びた迷惑な人間が筐体の隙間に触って静電気がLEDに飛んできます。

LEDのど真ん中に飛ぶとは考えにくいので、LEDのアノード側に飛んだときとカソード側に飛んだときで考えましょう。

 

消灯時のLEDのアノード側に+8000Vが飛んだ!

LED静電気3

 

見ての通り、+8000VはVCCより絶対に高いので、VCCに逃げていきます。

LEDの中を通っていかないのでLEDは無事です。

電源は低インピーダンスなので静電気ぐらいでは普通は壊れないので大丈夫でしょう。

 

 

消灯時のLEDのカソード側に+8000Vが飛んだ!

LED静電気4

 

カソード側に+8000Vがかかりました。

抵抗の先は絶縁状態ですから、流れやすいVCCに流れようとします。

しかし、そのときに途中にLEDがあるわけです。

静電気はどうするでしょう?

静電気さんはそんなことは気にしません。

自分の電圧でゴリ押しして突き抜けるんです。静電気とはそういうやつです。

LEDの逆電圧って普通5V程度ですよ?

そこに8000Vがかかってご覧なさい。

100%ご臨終です。

 

 

LEDと逆方向にダイオードをつなげてみよう!

 

LED静電気5

 

ということで、LEDと逆方向にダイオードを並列接続します。

LEDの逆方向電圧は5Vなのに対して、普通のダイオードの順方向電圧は0.6V程度なので、ダイオードの方が流れやすいわけです、

ということで、+8000Vはダイオードを流れていくのでLEDは壊れずにすみます。

 

ここまではOKです。

しかし、忘れちゃいけない。

静電気には+8000Vだけじゃなくて、-8000Vなんてものもあるんです。

 

消灯時のLEDのアノード側に-8000Vが飛んだ!

この回路にたいしてアノード側に-8000Vを掛けてみましょう。

LED静電気6

VCCからアノードに電流が流れるだけです。

このときはLEDに電流が流れないので無問題です。

 

次にカソード側に-8000Vをかけてみましょう。

 

消灯時のLEDのカソード側に-8000Vが飛んだ!

LED静電気7

さて、こんどはLEDの順方向側に静電気が流れることになります。

ダイオードの逆方向電圧は普通100V以上あるので、順方向電圧2-3V程度のLEDの方が流れやすいわけです。

「LEDの順方向にすごく大きいピーク電流が流れる」

というわけです。

これがOKか?

これが微妙なんです。

100%壊れるとはいえないですが、LEDは弱いので静電気のピーク電流で死ぬ可能性もあるわけです。

 

 

ツェナーダイオードを使用したLED保護回路

LED静電気8

ということで、ダイオードをツェナーにしてみます。

このツェナー電圧はLEDの順方向電圧より大きい必要があります、

そうでないと、LEDが発光する際の電流がツェナーに逃げてしまいます。

ここでは5.1Vにしてみました。

-8000Vの静電気が入ったときのサージ電流はどれほどでしょうか。

正直わかりませんが、相当大きいのは間違いありません。

その時のLEDの順方向電圧とツェナー電圧のどちらが大きいか?

これもわかりません・・・。

しかし、想定としては、サージ電流が大きすぎてLEDの順方向電圧は7Vとか18Vとか大きな値になり、それに対してツェナーダイオードのツェナー電圧の方が小さくなり、電流はツェナーダイオードを流れていくことになります。

そうすると、ツェナーダイオードのサージ耐性はLEDよりあるのでLEDを壊さずに済むわけです。

 

 

まとめ

これまでのことをざっくりまとめると。

 

静電気耐性は

保護なし<<<<<<<<<並列にダイオードを逆方向に接続<<並列にツェナーダイオードを逆方向に接続

となります。

 

逆方向電圧から保護するにはダイオードが必須で、順方向のサージ電流から保護するにはツェナーダイオードが必要、ということです。

ダイオードだけでも大丈夫だと思いますが、条件によってはツェナーにしないとダメかもしれない、という考察になります。

 

まぁ、ぶっちゃけた話、どうせ対策するならツェナーにするのが無難です!

 

以上、小田切でした!

まさか、今時ハンダゴテ一つではんだ付けしてない?

まさか、まさかまさか、現場ではんだごて一つで基板と格闘してませんよね!?

ありえないと思いますけど、そんなことあったりします!?

 

コテ一つじゃ熱量が足りない!

最近の基板は普通に4層くらいあります。

たまに2層もありますが・・・

何が言いたいかというと、とにかく基板の中身が銅で埋まっているということです。

スカスカのダメ設計の基板ならとにかく、普通にGNDベタを入れていれば、基板全面に銅箔が貼られているわけです。

つまり、ちょっとやそっとの熱を加えてもそこに熱が逃げてしまうので、全然温度が上がらない!!

GNDにつながっていない部品ならまだいいですが、GNDにつながっている部品は基板全体を暖めるつもりで熱を加えないと取れないし、ハンダも載りません。

 

鉛フリーは更に溶けにくい!

昔のなまりハンダはまだよかったのですが、今のハンダは全て鉛フリーですから、融点が上がっていて更にとけにくい!

なんかもうヤケクソのように熱を与えないと溶けてくれません。

 

コテ一つじゃ端子の片方にしか当たれない!

例えば、GNDにつながっている代表格はコンデンサです。

積層セラミックコンデンサだとすると、長方形をしていて両端が端子です。

当然ですが両方に熱を加えないと部品は外れません。

「片方に熱を加えて熱くなったところでもう片方に当たればいいじゃん」

とか、そんなの無理です。

今の基板は放熱がすごく良い上に、溶けにくい鉛フリーなんです。

コテを離した瞬間にすぐに固まってしまいます。

 

結論

ハンダゴテは二つ用意して下さい!

一つじゃどうにもなりません!

積層セラミックのような部品を外すときには二つのコテで両方から挟み込む。

そうしないと作業になりません!

 

以上、風邪でやけくそ気味な小田切でした。

ショットキーバリアーダイオードと普通のダイオードの違い(初心者向け)

普通のダイオードとショットキーバリアダイオード(ショットキーダイオード)の違いについてわからない!

という方向けに簡単に説明したいと思います。

 

ショットキーバリアダイオードとは?

普通のダイオードはP型半導体とN型半導体をつかった部品ですが、

ショットキーバリアダイオードは半導体と金属を組み合わせた部品です。

一番大きな特徴は「普通のダイオードと比較して電圧降下が小さい!」ということです。

 

記号

 

ショットキーダイオード

 

こんな記号です。

普通のダイオードと同じような記号ですが、三角の横の棒がS字になっているのが異なります。

 

向き

向きは普通のダイオードと同じです。

上の図では左(アノード)から右(カソード)に流れ、逆方向には流れません。

 

使い方

普通のダイオードと基本的には同じです。

電流・電圧の耐圧に問題がなければ、普通のダイオードをショットキーダイオードに変えても問題ないことが多いです。

 

特性(普通のダイオードとの違い)

順方向電圧(電圧降下)が小さいので、ダイオードで消費される無駄な電力を減らすことが出来ます。

ただし、高電圧で使える部品が無く、低電圧(数十ボルト)でしか使えません。

また、逆方向に電流を流そうとすると、普通のダイオードはuA程度の電流しか流れないのに対し、ショットキーバリアダイオードはmA程度の電流が流れてしまいます。

 

用途

・低電圧機器の大電流の整流

・逆方向電流が問題にならない回路(簡単に説明できないので、上級編でいつか)

 

以上、小田切でした。

ダイオードの電圧降下(順方向電圧)とは?

ダイオードを使うと電圧降下するわけですが、「よく意味がわからない」という方が結構いるようです。

ここで簡単に説明したいと思います。

 

回路図の例

ものすごく簡単な回路図を示します。

1.5Vの電池があって、ダイオードがあって、その先に10Ωの抵抗がついています。

 

ダイオード回路図

 

 

 

電圧降下がない場合

 

いわゆる理想ダイオードだとこうなります。

 

ダイオード回路図2

 

D1の電圧降下がゼロでR1には1.5Vがそのままかかって、そしてR1には150mAが流れます。

 

 

実際には電圧降下がある

 

ダイオードには一般的に0.6-0.7Vの電圧降下があります。

例えば0.7Vとすると・・・

 

ダイオード回路図3

 

ダイオードを通った後に0.8Vになってしまいます。

なんとほぼ半分の電力(エネルギー)がダイオードに食われてしまいます。

おお、神よ、なんと非効率な!!

ちなみに、電池が100Vだったら、ダイオードで電圧降下しても99.3Vになるだけなのでたいしたことないです。

低い電圧でダイオードを使うととにかく非効率でもったいないということがわかります。

そして、電圧が0.8Vになったことでこの回路では抵抗に流れる電流も80mAに減っています。

 

電圧降下はいつも一定なの?

 

上記で電圧降下は0.6-0.7Vと書きましたが、それはいつも一定なのでしょうか?

いいえ、違います。

慣例的に0.6-0.7Vで計算しますが、実際には電流と部品によってそれよりも大きくなったり小さくなったりします。

 

じゃあ、電圧降下はどうやって計算するの?

 

もしかしたら教科書には原理や計算の式が載っているかもしれませんが、そんなもので計算はしません。

計算しません!!

そもそも使いたい部品の物性なんて開発者にはわかりませんので、計算なんかできません。

そうではなく実測データを使用します。

実測データはどこにあるか?

それがデータシートです。

知らない人が見るとわけが分からなくて頭が痛くなるデータシートですが、ここにこういう情報が載っています。

 

ダイオードの電圧降下をデータシートから調べる方法

 

秋月電子でも売っている、PANJITの1N4007という典型的なダイオードのデータシートがこれです。

http://pdf1.alldatasheet.jp/datasheet-pdf/view/14624/PANJIT/1N4007.html

 

このなかにこんな図があります。

1N4007Vf

「TYPICAL FORWARD CHARACTERISTICS」→「典型的な順方向特性」

今回の電圧降下は順方向に電流を流したときの特性なので、ずばりこの図が欲しい情報になります。

なんか見切れていますが、横軸が「電圧降下」で縦軸が「電流」になっています。

この図からこんなことが読み取れます。

「0.01Aを流すと電圧降下は約0.6V」

「0.1Aを流すと電圧降下は約0.75V」

「1A流すと電圧降下は約約0.95V」

 

上の回路では約0.1Aが流れていますので、「この回路でのダイオードの電圧降下は0.75Vぐらいだな」と予測がつくわけです。

 

また、電流が小さければ「0.6-0.7V」という一般常識に近い値ですが、1Aになると約1Vにもなってしまうのがわかります。

 

電圧降下の消費電力は?

 

電力P=電圧V×電流I

なので、1N4007に0.1Aを流すと、

 

P=0.75[V] x 0.1[A] = 0.075[W]

 

1N4007に1Aを流すと

 

P=0.95[V] x 1[A] = 0.95[W]

 

になります。

 

 

電圧降下の原理

 

そもそもどうして電圧降下が発生するのかと疑問に思うかもしれませんが、実際の所あんまりしらなくても問題ありません。

というか、そこを勉強しても実務であまり役に立ちません。

とにかくそういうものだと考えてもらってOKです。

あえていうと、ダイオードはP型半導体とN型半導体がPN結合している構造をしていて、PN結合部に0.6-0.7V程度の電圧が発生してしまいます。

そして、それが電流を流す時に障害になるので、その電圧分がダイオードで消費されてしまうわけです。

 

 

その他、よく聞かれる質問です。

 

Q.ダイオードを並列にすると電流を沢山流せる?

 

半分YESで半分NOです。

全く同じ型番のダイオードでも電圧降下にはばらつきがあります。

1Aを流した時、あるダイオードが0.6Vで、あるダイオードが0.65Vだとします。

するとこの二つを並列にしても、0.6Vのダイオードにばかり電流が流れしまいます。

ある程度は電流が分かれるので、1つの時よりマシになりますが、2倍流せるとまではいきません。

なので、普通やりません。

 

 

Q.ダイオードの電圧降下を小さくするには?

 

そういうときはショットキーバリアダイオードを使用します。

こちらは電圧降下が0.2-0.3Vあたりから始まるので、非常にナイスです。

 

 

 

以上、小田切でした。

ダイオードの種類について 特徴・用途 (初心者向け)

ダイオードの種類について説明します。

ウィキペディアをみると真空管ダイオードまで紹介されていますが、実際の業務で使うものではないので・・・

リアルな業務で使用している部品について「のみ」説明します。

これだけ知っていれば、プロの設計者とも会話が成り立つ・・・かも?

 

 

■ダイオード(PNダイオード)

ウィキペディアでは「PNダイオード」と書かれていますが、業務ではそんな呼び方しません。

単純に「ダイオード」と呼ばれます。

なので、「ダイオード」と言っているのは「PNダイオード」のことなのか「ダイオード全体の総称」をいっているのかを文脈から判断することが必要です。

 

◯特徴

・高電圧に耐える物がある:例:12,000V耐圧

・電圧降下が大きい:0.6-0.7V以上

・逆方向電流が小さい:uAオーダー

 

◯用途

用途は上の特徴から導かれます。

・高電圧の整流(AC100VからDCを作る場合など)

・小電流の整流

・逆方向電流が問題になる回路(簡単に説明できないので、上級編でいつか)

 

◯メリット

高電圧でも使えるし、安いです。

 

◯デメリット

電圧降下が大きいので、大電流が流れるところに使うとダイオードが電力をたくさん消費してしまいます。

なので電圧が低くて電流が大きいスマホや小型家電では、電源の整流にはこの部品は使いません。

といっても、高電圧の整流ではこれを使うしか無いので、電流が大きくてもACの整流にはこれを使います。

 

 

■ショットキーバリアダイオード(ショットキーダイオード)

普通のダイオードに対してこんなダイオードがあります。

電圧降下が小さいダイオードです。

 

◯特徴

・低電圧でしか使えない:100V超えのものもあるが、数十Vが普通

・電圧降下が小さい:0.2V以上

・逆方向電流が大きい:mAオーダー

 

◯用途

・低電圧機器の大電流の整流

・逆方向電流が問題にならない回路(簡単に説明できないので、上級編でいつか)

 

◯メリット

無印なダイオードと違って電圧降下が小さいので、ダイオードで消費される無駄な電力が少ないです。

PCやスマホなどDC20V以下の製品は大体このダイオードを多用しています。

 

◯デメリット

しかし、残念なことに耐圧が低いのでAC100Vなどには使えません。

100V以上の耐圧が高いものもありますが、ショットキーバリアダイオードなのに電圧降下が大きかったりしてイマイチです。

あと、逆方向電流が大きいのでそれが問題になることもあります。

 

 

 

 

 

ダイオードの基本は整流なのですが、実はそれ以外に特殊な用途に使うダイオードがあります。

 

 

 

■ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)

逆方向に電圧をかけると両端が一定電圧に保たれるダイオード。

普通のダイオードはアノードからカソードに電流を流す形で使用しますが、これは逆にカソードからアノードに電流を流します。

教科書的には回路内で基準電圧を生成するのに使用したりします……が、現実ではそういうのは精度がいいICを使うことが多いです。

なので、実際にツェナーダイオードで基準電圧を作るケースは非常に少ないです。

あとは一定電圧になると導通するという特性を活かして、静電気などのノイズ保護にも使用します。

(ふだん低電圧の信号が通っているときはほぼ絶縁状態で影響なく、高電圧がかかったときだけ導通する)

 

■LED(発光ダイオード)

みんな大好きLED。

電気的にはダイオードですが、光るので照明やインジケータとして使用されます。

 

■その他

定電流ダイオード:ダイオードという名前がついていますが、中身はダイオードじゃないです。

 

 

以上、小田切でした。

ダイオードとは? 役割と記号と向き(極性) (初心者向け)

役割

ダイオードとは基本的に「片方向だけに電流を流す部品」です。

それは何に使えるかというと・・・実はいろいろあります。

ここでざっと書き出せないぐらい。

ですが、初心者向けの基礎としてはこのぐらいの使い方を知っていればいいでしょう。

 

1,電源の保護

電源が入ってくる部分にダイオードを入れることで、仮に電源のプラスマイナスを逆に繋いだ場合に電流が流れなくなります。

つまり、極性を誤った時に製品が壊れるのを防ぐことができます。

 

2,電流を整流する

交流というのはプラスとマイナスが交互に反転します。

つまり電流が流れる向きが時間とともに変わるのです。

じゃあ、そこに例えば、端子1がプラスで端子2がマイナスのときにだけ電流が流れるようにダイオードを入れたら?

すると同じ方向にしか電流が流れません。

つまり、交流を直流に変換できるのです。

とはいえ、ダイオードだけでは電圧と電流が大きくなったり小さくなったり状態になるので、さらにコンデンサなどを使って平滑化しないといけません。

 

3,その他いろいろ!

DCDCコンバータで電圧変換に使用したり、

部品の保護に使ったり、

電波を扱う回路で使用したり、

初心者の方にいきなり説明してもわからない利用方法が沢山あります!

そこは他の記事を呼んで頂ければと思います。

 

記号

こんな記号です。

三角形に線を付けただけです。

とても簡単

そして線がない左方向の端子が「アノード」です。

右方向の端子が「カソード」です。

 

向き(極性)

電流はアノードからカソードには流れます。

カソードからアノードには電流が流れません。(実際はちょっと流れちゃうんですが、ほとんど流れないと思って下さい)

見ての通り記号自体が矢印みたいになっているので、矢印の向きに電流が流れると思って下さい。

非常にわかりやすい記号になっています。

 

あれ、それだけ?

「ダイオードは記号が矢印みたいになっていて、その向きに電流が流れるだけ……え、簡単じゃん!」

その通り簡単です。

「じゃあ、だれでも回路設計できるね」

ある程度まではOKです。

でも、これは理想的なダイオードの話です。

現実のダイオードは違います。

 

理想:いくらでも電流が流せる

現実:限界がある

 

理想:逆に電圧をかけても電流が流れない

現実:高い電圧をかけると流れてしまう。さらに、低い電圧でも少しだけ流れてしまう

 

理想:電力の損失はゼロ!

現実:電圧降下と言って、ダイオードが抵抗成分として働いてエネルギーの一部がダイオードで消費されてしまう

 

初心者の電子工作では問題にならないと思いますが、世の中に出す製品を設計するときはこういう知識がないとヒドイことになります。

これらは中級者向けの記事で書いていこうと思います。

 

以上、小田切でした!!